中古マンションの購入やリフォームでは、さまざまなトラブルが。「規約で希望のリフォームができない」「入居したら給湯器が壊れていた」「近隣からのクレームで工事がストップ」…。気をつけたい、比較的身近な事例を紹介します。事前に知って、トラブル回避に役立てましょう。教えてくれたのは、マンションリノベーションのコーディネートを行う会社「EcoDeco」で、マンション売買の業務に携わる、宅地建物取引士の天井理絵さんです。

契約成立時に結ばれる不動産売買契約書
契約成立時に結ばれる不動産売買契約書。自己都合での解約の場合、手付金は戻ってこない
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トラブル1.売買契約後は、心変わりしてもお金は戻らない

中古物件の売買契約を終えたあとに「ほかに物件が見つかったのでやはり購入をやめたい」と買主が不動産業者に相談するケースがあります。筆者は経験がありませんが、この手の話はしばしばある模様。

いったん契約が成立してしまうと、契約を解除しても、解除理由が自己都合だった場合は、契約時に支払った手付金は戻りません。加えて、仲介した不動産会社からも仲介手数料を請求されます。

手付金は物件代金の5〜10%が一般的。仲介手数料は物件代金の3%+6万円が上限です。つまり物件価格が5000万円だった場合、手付金は5%でも250万円に。これに不動産会社と上限の仲介手数料で契約していたとしたら、総額で400万円以上支払うことになります。

こういったトラブルを防ぐためには、仲介会社が物件について調査・報告することは当然として、買う方もしっかりと物件について把握し、納得して購入申し込みを。そのうえで、契約を結ぶことが大切です。

 

トラブル2.「ローン特約期日」までに住宅ローンが通らなかった

外観

中古物件購入の際に、住宅ローンを使う方がほとんどなのですが、なかには住宅ローンがなかなか通らない人も。

住宅ローンが通らなくても「トラブル1」のように手付金を支払わなければいけないのか? 答えは「いいえ」です。通常、売買契約書には、「期日までに住宅ローンが通らなかった場合には契約をご破算にしましょうね」という「住宅ローン特約」という条件がついています。この一文がある契約なら、手付金は戻ってきます。

通常、売買契約前に「住宅ローンの事前審査」という簡単な審査を通過したうえで、本審査に臨みます。ですので、本審査も通ることがほとんど。とはいえ、筆者の扱った物件で、うまく事が運ばなかったケースもありました。たとえば、土地の持分が特殊であったり、増築部分があったりと、特殊な事情を抱えている物件です(筆者のケースだと中古マンション)。通常よりも審査に時間がかかり、ローン特約期日までに間に合わなかったのです。

ちなみにこのケースでは、ほかに買いたいというライバルもなく、売主が待ってくれるということもあって、ローン特約の期日を延長することでことなきを得ました。担当者としては、冷や汗モノ…。

 

トラブル3.売主が利用していた駐車場が使えない!

駐車場

分譲マンションの場合、駐車場がついていても「駐車場が使えない」という場合があります。これは個々のマンションの駐車場運営方法の違いによるものです。

駐車場の権利や運営方法はいくつかパターンが。おおまかに「使用権を継承できる」「物件を購入しても使用権は継承できない」「別契約で賃貸」「一定期間ごとに抽選」と4つに分かれています(ちなみに条件は、管理規約や細則に書かれていますので、購入前に知ることが可能)。

そんなわけで、買主としては「使用権を継承できる」と思っていたのに、じつは「物件を購入しても使用権は継承できない」ということが当然あります。逆に、契約書にもマンションの管理規約にも記載されているのに、「使用権を継承できる」と思い込んでいる売主も。

あとで後悔しないためにも、契約前に渡される管理規約などのマンション資料や契約書類をしっかり読み込みましょう。また、仲介担当者への事前確認もしておきたいところです。

 

トラブル4.フローリングに変更できない!

マンションでリフォームをする場合、管理規約に従った内容にしたり、事前に工事申請をして承認を得たりする必要があります。フローリングに関する規約では「遮音等級 LL-45以上のものを使用」など、音が響きにくい材を使うように指定されることが多いよう。

しかし一方で、「フローリングに変更できない」という場合もあります。管理規約のリフォームに関する細則をチェックしましょう。

滅多にあることではないのですが、管理規約でOKだとしても気が抜けない場合もありまして…。とあるマンションではこんなことも。規約上フローリングにすることは問題なかったのに、工事申請の際に「理事会へ説明してほしい」と要請されたケースがありました。

 

トラブル5.間取りが変更できない!

リノベーション工事中のマンション

購入した中古マンションの間取りを変えて、LDKを広くしたり、部屋の位置を変えたり。そんなマンションリフォームの醍醐味が、味わえないというケースも!

マンションのなかには「天井にビスを打つのは◯本まで」と規約で決めている場合もあるのです。使えるビスの本数を少なくして、間取りの変更といった大掛かりなリフォームを実質けん制するような規約も見かけました。

このように、マンションには独自のルールが決められていますので、要注意です。「理事長が変わってから、お風呂はバランス釜から変更できなくなった」といったマンションにも、筆者は出くわした経験があります。