3年前の台風で、3日間の停電を経験した日刊住まいライター。家を建てたときに設置した太陽光発電パネル+蓄電池に大いに救われました。とはいえ、いざ利用しようとすると、操作がわからずてんやわんや。使える家電に制約があることも思い知らされます。停電時にどの程度日常の暮らしを維持できるのか、詳しくレポート。

太陽光発電と蓄電池の状況を管理する操作パネル
太陽光発電と蓄電池の状況を管理する操作パネル
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非常用電力として、太陽光発電パネルと蓄電池を採用

8年前に、ハウスメーカーで家を建てた筆者。その際、「太陽光発電パネル(容量6.33kW、シャープ製)+蓄電池(容量7.2kW、ニチコン製)」を合わせて設置しました。

 

筆者宅の蓄電池

これらの設備を採用した理由は、以下のようなメリットがあると言われていたからです:
・太陽光で発電した電気の活用と余った電気の売却
・割安な深夜料金で蓄電池にためた電気の活用
・非常時の電力として使える

実際、暮らし始めてからは電気代の収支が大きくプラスになる年も。大いにメリットを受けています。

しかし筆者は、経済的なメリットよりも、「非常時の電力として使える」という点に大きな期待をしていました。大地震や大規模水害は、いつわが身に起きるかわかりません。自宅に発電+蓄電設備を設置して、安心したかったのです。

 

3日間の停電。未経験者が太陽光発電を使うのは難しい?

初めて非常電力として利用することとなったのは、3年前の夏。台風の被害で、筆者の住む地域で停電が発生したのです。予想以上に長引く停電期間。3日間を「太陽光発電+蓄電池」に頼る事態に。

ただ、いざ非常電力として利用しようとすると、知らなかったことや思い違いの存在に気づかされるハメに。試行錯誤しながら、必要な手順やできることを探って、利用することになりました。

 

●手動で自立運転モードに切り替えないと電気が使えない

停電が発生したのは午前6時過ぎでした。台風は過ぎ去って日差しもあり、通常であれば太陽光発電がそろそろ始まるという時間帯。太陽光で発電するはずだから、とりあえずは大丈夫。そう思い込んでいたら、太陽光発電は停電発生と同時に運転を停止しており、なんと作動していませんでした。

 

太陽光発電の操作パネル

停電時に太陽光発電を非常電力として使うには、わが家の設備の場合、操作パネルで自立運転モードに切り替え+運転再開という操作をする必要があったのです。

それに気づかず、だいぶ時間をロスすることに。あわてて取扱説明書を引っ張り出して、切り替え操作を行いました。日頃から非常時に必要な操作を把握しておくべきだったと痛感(なお、蓄電池側は自動的に非常運転モードに切り替わるため、操作不要でした)。

 

●自立運転用コンセントの設置場所は期待通り

少し手間取ったものの、切り替え操作を行って太陽光で発電した電気が屋内に供給されるようになりました。ただ、順調に発電していても、停電時の自立運転モードでは「自立運転用コンセント」にしか電気は供給されません。

 

自立運転用コンセント

自立運転用コンセントとは、停電時に太陽光発電の電力を使用するための特殊なコンセント。設置場所や数は、非常時に「どこで」「どの機器を」使えるようにしておきたいかを踏まえ、建築時に決定するものです。

1階が親世帯、2階が子世帯という二世帯住宅のわが家では、以下の場所・機器で使えるように自立運転用コンセント(電源)を設置していました。

 

自立運転用コンセントの設置状況

1.冷蔵庫用2か所(親世帯用、子世帯用)
2.固定電話用1か所
3.テレビ用2か所(親世帯用、子世帯用)
4.インターネット関連機器用1か所
5.ワークスペース(ノートPC用)1か所
6.1階(親世帯)LDKの照明
7.1階(親世帯)トイレの照明
8.階段の照明
※いずれも自立運転専用ではなく、通常時も使える兼用コンセントです

停電未経験者の筆者が想定した設置プランでしたが、結論としては正解。やはり非常時は、「冷蔵庫の冷却機能」「情報収集手段(テレビ・インターネット)」「最低限の照明」の維持が大事だと、停電生活で再確認しました。

コンセントの差し替えや配線の延長などすることなく、この3つを維持できたことで、不都合はほとんどありませんでした。また、コンセント数にも余裕があったので、スマホの充電や扇風機などの利用も可能。快適に過ごすことができました。

 

●順調に発電していても、使える電力は最大で1500W

コンセントは多めに設置。晴天で発電も順調。運よく、太陽光発電には好条件の停電期間でしたが、把握できていなかったのが使える電力量。どんなに十分に発電していても、同時に使用可能な電力は、家全体で最大1500Wという制限があったのです。

しかもわが家の場合、接続している機器の電力合計が1500Wを超えてしまうと、太陽光発電が運転停止してしまうという仕組みに(手動での再開操作が必要)。これは停電になって取扱説明書を見て、初めて知ったことでした。

1500Wを上回らないように調整するのも、また困難。というのも、どの機器がどのくらい電力を消費するのか、筆者は知らなかったからです。

 

家電の取扱説明書

そこで、日常的に使っている機器の消費電力を改めて調べてみたところ、以下のような数字でした。
・テレビ:335W
・冷蔵庫:125W
・電子レンジ:1450W
・炊飯器:1210W
・洗濯機:1190W
・ドライヤー:1300W

 

洗濯機

ということで、電子レンジ、炊飯器、洗濯機は使わない方がよいと判断。結局、停電期間に、気兼ねなく使用できたのは以下でした:
・冷蔵庫2台
・インターネット接続
・扇風機
・スマホ、モバイルバッテリーなどの小型機器の充電

使えるのは、本当に必要最低限のものだけとの印象。料理、洗濯のような日常的な家事まで非常電力でまかなうのは、やはり難しいということです。当たり前ですが、あくまで「非常用」の電力であり、通常通りの生活を維持するためのものではないことを思い知りました。