ものを増やさずすっきり暮らすには、「買わずに生かす」というのも手です。ものを買わず、あるものを生かしながら楽しく暮らしている小笠原洋子さんの知恵をご紹介します。

関連記事

73歳、「持たなくていい」と決めているもの。カーテンやマットを処分した理由

「持たない」ことで、知恵を働かせるのが楽しい

画廊と美術館での学芸員経験を持ち、現在は美術エッセイストとして活躍中の小笠原洋子さん。高齢者向けの3LDK団地で暮らしています。家には余計なものはありませんが、一角にはかつて仕事として関わっていたアート作品や画集がズラリ。窓際には手づくりのモビールが揺れ、センスが感じられます。

小笠原洋子さん
服はパターン化しています
すべての画像を見る(全5枚)

「現役時代には、それなりに家具や服も持っていました。でもね、あるとき、大きな洋服ダンスを処分せざるを得なくなって。それで『ものから自由になる解放感』を実感したんです」
何度かの引っ越しや実家の片づけを経て、小笠原さんのなかに明確な「持たない・捨てるルール」ができ上がっていったと言います。

●「持たなくていいもの」をはっきりさせた

「ものを持たず・お金も使わず。とはいえ、それで自分がみじめになるんじゃ本末転倒ですよね」
自分なりの価値観で「持たなくていいもの」をはっきりさせることに。
「実家にあったダイニングテーブルや大きなじゅうたん。食器棚にいっぱいの食器。必要ないばかりか、私にとっては、使いもしないものが家の中にあることの方がストレス。洋服ダンスを手放したときも、心が痛んだのはほんの一瞬。むしろ『今まで持て余してたんだ』と気づいたぐらい」

●だれにもじゃまされずに自分らしく暮すのがいちばんのぜいたく

新しくなにかを買うときも、今あるもので代用できないか、じっくり考えます。それでも、オリジナルのアートが飾られているのは、若い頃から美術に触れ、心癒やされてきたからこそ。アートは小笠原さんにとって、生活の一部なのです。
「ずっと美術関係の仕事をしてきました。でも、今あるのは昔買ったものばかり。あとはあるもので工夫して、飾っているだけです。窓辺のモビールなんてメモ用紙を切っただけですから(笑)」
“持たない暮らし=質素”と捉えがちですが、決してミニマリストではないのが小笠原さん流です。
「いかに知恵を働かせてお金をかけず、心豊かに暮らせるか。そんなケチライフを“ケチカロジー”と名づけています。だれにもじゃまされずに自分らしく暮らせる。こんなぜいたく、お金じゃ手に入りませんよ」

 

【小笠原さんの捨てヒストリー】

30代 幼い頃、母に買ってもらったオルガンを処分。音楽関係の仕事を目指すも、抱き続けた夢を潔く断ちきるという生き方のきっかけに。

40代 引っ越すたびに運んでいた大きな洋服ダンスを処分。家財のムダを意識し始めたという小笠原さんのターニングポイントに。

50代 母からもらった着物など、どうしても捨てられないものをリメイク。「使えるものはとことん使い倒す」スタイルが確立。