洗濯や衣類管理が格段にラクになる間取りを紹介します。主寝室にクローゼットを併設する場合は、洗濯・家事室をその近くに。個室が多く、廊下が必要な間取りでは、廊下自体を家事室の機能を持たせることがポイント。一級建築士の石川淳さんが、自身の設計した3つの事例を使って解説します。狭小住宅でも使える間取りの極意です。
すべての画像を見る(全18枚)Case1:寝室・サニタリー・クローゼットをつないで機能的に
【この家のプロフィール】
・家族構成:夫婦
・間取り:1階 LDK 2階 寝室+サニタリー
・所在地:東京都
・延床面積:96㎡
夫婦ふたりのための家で、1階リビングから見上げると2階にオープンな寝室があるワンルーム的な住宅です。
施主の希望は、大きな吹抜とそこに開くオープンな寝室。それ以外にも、たくさんお持ちの洋服の収納室とサニタリー、洗濯機置き場のプランニングが課題でした。
そこで提案したのがこのプランです。
リビング階段を上がると寝室。その寝室を通り抜けると、吹き抜けを囲むようにクローゼットと洗面・脱衣コーナーを「の」の字型に配置しました。いちばん奥の突き当たりは浴室です。
洗濯室は寝室から直接入る小部屋になっていて、方位は南。直射日光が入りやすいこの場所で物干しも行います。
寝室に面した洗濯室の入り口ドアです。ドアノブとシンクは、施主こだわりのレトロなデザインの製品。天井には物干しパイプを取りつけてあります。
こちらは寝室から見た、ウォークスルー式のクローゼットの入り口です。
ウォークスルー式のクローゼット内部は、細長い廊下状の空間。片面にハンガーパイプを2段に通しています。
右の壁の向こう側はリビングの吹き抜け。壁は天井まで伸ばさず、パーティション状にして高さ2mほどに。この上のすき間から、天井面に反射した自然光が、クローゼット内に届きます。
上はウォークスルー式のクローゼットの奥の部分です。
ウォークスルー式のクローゼットを進むと左に直角に折れて洗面スペースへ。壁には姿見を貼りつけてあり、右の壁面棚は大工工事のつくりつけです。
洗面兼脱衣スペース。その奥に浴室があります。
置き家具のチェストは施主が以前から持っていたものですが、引き出しの箱を大工さんにつくってもらい、同色に塗って小物収納に。洗面の前の壁には、水蒸気を排気しやすいように高窓をつけました。
収納の扉を少なくすることで工事コストも抑え、また家事に必要な機能スペースをひと筆書き的に配置して、一連の動作がスムーズにできるように設計した間取りです。
Case2:寝室内に洗面&洗濯機置き場!?じつはかなり快適
【この家のプロフィール】
・家族構成:夫婦
・間取り:1階 LDK+サニタリー 2階 寝室+トイレ+物干しバルコニー
・所在地:埼玉県
・延床面積:40㎡
こちらの住宅は、夫婦ふたりが暮らす狭小住宅です。1階は、愛犬と暮らすことを重視してモルタル仕上げに、というのが施主からの要望でした。
玄関から引き戸を開いて入ると、犬の足洗い場も兼ねた洗面器があります。浴室はその横に配置しています。
リビング階段を上がると2階の寝室へつながります。上の図は2階の間取りです。階段前にトイレがあり、洗面スペースとその横に洗濯機置き場を配置。その前面にクローゼットスペースを設けています。
その先に寝室があり、寝室の面する窓に物干しバルコニーをつくりました。
2階の洗面スペース。洗面器奧側に洗濯機を置いています。
写真右側がクローゼットコーナーで、奥に寝室スペース。正面の窓の外に物干しバルコニーが続きます。
寝室スペースからの見返しです。奥に見える黒いドアがトイレです。
ちなみに敷地は、マンションなどを許容する用途地域にあるため、周囲を高い家に囲まれています。そのため、直射日光は天窓で取り込むように工夫しました。
入居後に筆者が訪問してみたら、家具やグリーンが入り、とてもすてきな空間に。家事動線もシンプルで使いやすいと喜んでくれました。
狭小住宅なので、ムダな廊下などをつくらず、合理的に間取りを追求したことで実現できた事例です。