原材料の高騰や円安の影響による、相次ぐ値上げ。買い物のたびに四苦八苦しているという方も増えているかと思いますが、海外ではどうなっているのでしょうか? そこで、アメリカ・シアトルに住んで十数年、子育てに奮闘するライターのNorikoさんに、「アメリカの買い物事情」について教えてもらいました。
アメリカでも相次ぐ食品値上げ…!
すべての画像を見る(全7枚)アメリカも日本と同じく、毎日の暮らしにかかわる食品が値上がりし続けています。家計に与えるインパクトは大きく、かなりの痛手です。アメリカの主要都市での食料品への支出は過去1年間で13.5パーセント上昇しました。
ただ、食品を買うのに税金はかからないのがせめてもの救いと言えます。シアトル生活も早20年ですが、暮らし始めた当初は日本との消費税の扱いの違いに驚きました。
●食品では、税金がかからないものも
「食品」と、ひと口に言ってもいろいろあり、課税対象になるものもあります。たとえば、そのまま食事となり得る調理ずみ食品、ソフトドリンク、栄養サプリメントなどは税金がかかります。生鮮食品は基本的に課税の対象外なので、できあいの食品を避け、野菜や果物、肉、魚など、自然の食材を買えば、節約になるうえ健康にもいいというわけです。
考えてみれば、低所得世帯に限らず、食べ物がなければヒトの生き死ににもかかわる深刻な影響を与えることになりますから、基本的人権の観点からも、そこに高い税金をかけるというのはおかしな話ですよね。
ここシアトルでは、決して高級ではない普通のご近所スーパーにも、いろんなオーガニック食材が、オーガニックではない食材とそこまで大きく変わらない値段でずらりと並びます。日本でオーガニック食材を買うと、種類が少ないうえ鮮度も微妙なのにビックリするくらい割高だと聞くので、その点では選択肢は豊富かもしれません。
都市部でありながら1年中オープンするファーマーズ・マーケット(地元農家が出店する青空市)が開催され、農家直送のとれたて新鮮野菜が届く宅配サービスも充実します。
●子育て世代や、貧困世帯には手厚い支援も
シアトルでは、子育て世帯にうれしいサービスも。地域の主要スーパー各店では、買い物をすると子どもひとりにつきフルーツ1個が原則無料となる食育プログラムを実施しています。もちろん、オーガニックのフルーツも対象!
小さな子どもをショッピングカートに乗せ、無料のフルーツをしゃぶらせて気を引きながら、そのすきに買い物をささっとすませるという強者も見かけます。精算前に食べたり飲んだりして、空き容器のバーコードを読み取ることになっても決して怒られない、何事にも大らかなアメリカらしい光景かもしれません。
ちなみにアメリカ政府は低所得世帯向けに「フード・スタンプ」と呼ばれる食品購入に限定した手当を出しており、国民の13パーセントに当たる4150万人が利用しています。また、子どもの貧困をなくせるように、長期休暇中はランチやおやつを公園やコミュニティーセンターなどで無料配布。
コロナ禍では約2年間、普段は有料の給食がだれでも無料となり、リモート学習期間中も、スクールバスを活用して各家庭に届けるなどしていました。「フードバンク」や「フードパントリー」と呼ばれる非営利団体の取り組みが全米各地に浸透し、それぞれの街で余った食品の寄付を集めて必要とする家庭に無料提供。食品ロスの削減、有効活用に努めています。