故人が生前に所有していた「遺品」。整理しなければと思いつつもなかなか心が追いつかいないもの。ESSEをはじめさまざまな雑誌で活躍するライターの佐藤由香さんは、当時56歳の夫が突然亡くなるという経験をされました。今回はそのときの経験を思い出し、「遺品整理」について、前後編でつづっていただきました。
思い出の分だけ、処分できない「遺品整理」
すべての画像を見る(全9枚)2020年に致死性不整脈の疑いにより、単身赴任先の自宅で夫が突然死してから2年半。葬儀、相続、法要…死後にふりかかるさまざまな雑務のなかで、あと回しにしがちなのが「遺品整理」です。
これがまた気が重い作業でした。突然いなくなったことが悲しすぎて、夫が洗って乾かしておいたキムチの空き容器や飲んだペットボトル(要するにゴミ)までも捨てられません。東京の家にあった夫の「置きサンダル」も、オヤジ臭くて本当にイヤだったのに、いなくなってしまうと捨てられないし、通勤バッグなんて触るだけで涙が出そう…。
なにもかもが思い出グッズになってしまい、もう必要ないとわかっていても簡単に割り切れないのです。数年前に亡くなった父親の私物は躊躇なく処分できたのに、状況が違うとまったく考え方が変わるものなんです。
それでも、いつまでもそのままにしておくわけにはいかないので、優先順位を決めたり、人の力を借りたりしながら、2年半かけてどうにか段ボール4つ分くらいの量まで減らしました。同じように困っている方のために、今回は私なりの遺品との向き合い方と整理のポイントをお伝えしたいと思います。
●とっかかりは複数人でやると早くすすむ
私の場合は、単身赴任先を引き上げるときが第1弾の遺品整理でした。そのときは義妹が手伝いに来てくれたので、「これはいらないよね」「よし、ごめん、捨てよう」などと話しながら作業できて、とても助かりました。1人だとどうしても決断が鈍るので、可能なら最初は、身内2、3人くらいでわあわあ言いながらやると勢いがつくし、悲しみや罪悪感も紛れていいのではないかと思います。
●とにかく段ボールにまとめる
人のものなので、なんだかよくわからないものもたくさん出てきます。基本的には場所やものごとに段ボールに入れていきましたが、「いま判断できない」と思ったら、分類もなにも考えずひとつの段ボールに突っ込みました。
捨てるのも見返すのもいつでもできるので、まずは夫の私物をまとめてコンパクトな形にしておく。それだけでずいぶん片づいた感じになります。この中はごちゃごちゃであっても、1か所にある、ということが大事なのです。
前述の捨てられないゴミもいまだにこの中に入ってます。