●介護士さんを雇うほうが合理的

財産を持つ高齢者の子どもが「お母さんが心配で」と出戻ったら、いつの間にか帰ってきた子どもによって資産の名義が書き換えられていた…などという気分のよくない話を聞く機会はたくさんあります。

最初は善意で戻ってきたとしても、「残される財産」がある限り、どうしてもそうした事件は起こってしまうのです。若いうちに財産を譲り渡すのであればともかく、超高齢社会においては、正直、「子どもに財産を残す」という発想自体が向かないのではと思っています。

複数人子どもがいる場合は、「自分を介護してくれた子どもに財産を残す」と言う方もいらっしゃいます。しかし、本来は残されるお金があるから介護をするのではなく、愛があるから介護をするのです。

さらにいうと、介護をしてくれた子どもと、まったく面倒を見てくれなかった子どものふたりがいたとしても、残念ながら法的には相続は平等になります。いくら遺言を残したとしても、遺留分は確実にありますし、遺言無効の申し立てをされて、兄弟間で裁判が起こることも多いのです。

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認知症気味だった父親を一生懸命介護していた子どもに、父親が財産をすべて残すといっても、「父はそのときに判断能力がなかったのだ」と言われて、介護を一つもしなかった兄弟に裁判を起こされる。これが現実です。

介護を念頭に置いて財産を蓄えるならば、自分の世話をしてくれる住み込みの家政婦さんを雇うほうがずっと合理的です。フルタイムで月60万円くらいの費用がかかったとしても、20年でも1億4000万円です。年金と持ち家を使えば無理な額とはいえません。

そのあたりの金銭感覚には個人差があると思いますが、残せるような財産と呼べるものがあるのであれば、まず自分のために使ってからでもよいのではないでしょうか。