近年のウッドショックで木材の価格が高騰し、よい木材も手に入りにくい傾向に。それでもやはり「木の家に住みたい」と、多くの人が憧れているのではないでしょうか。ここで改めて、木の家のよいところと注意すべきポイントを紹介します。一級建築士の新井崇文さんが6つの観点から解説。見落としがちですが、売却したり、解体したりすることも視野に入れておきましょう。

木の家の室内
コスト、断熱&調湿性能、見た目…有利なことがなにかと多い木の家
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メリット1.建築コストが安い

木の家の寝室

住宅の構造には「木造」「鉄骨造」「鉄筋コンクリート造」などがあります。一般的に木造はもっとも建築コストが安い構造といえます。

その要因として、木は鉄やコンクリートよりも材料費や施工費が安いこと、木は鉄やコンクリートよりも重量が軽いため家の重量を軽くでき、地盤補強の費用を抑えやすいことが挙げられます。

 

メリット2.断熱性能が高い

木の家の収納

木材は、小さな細胞が集まってできたもの。木材の細胞は中空になっていて、空気を含んでいます。これが、木の断熱性の高さにつながるのです。木造の家は、構造体である木の柱や梁の間に断熱材を入れるだけで、高い断熱性の家ができます。

一方、鉄やコンクリートを構造体とする場合は、その外側か内側の全面を断熱材でおおって、熱が伝わらないようにする必要が。その分、壁や屋根の厚さのためのスペースや費用がかかります。

 

メリット3.調湿性能が高い

木の家の洗面

木は細かい細胞の集合により構成されており、そこに水分を蓄えたり放出したりすることができるため、調湿性能を持っています。

こうした特徴のある木を、家の構造体や仕上材、造作材(室内空間の仕上げや取りつけに使われる材料のこと)に使えば、梅雨時や夏場など湿度の高いときに、室内の湿気を木が吸収して湿度を下げてくれます。また逆に、冬場など湿度の低いときは、木が水分を放出することで室内の湿度を適度に上げてくれます。

そのため、木の家では湿度変化の比較的穏やかな室内環境をつくることができます。

 

メリット4.温かみがあり、風合いがよく、経年変化が楽しめる

風合いを感じる木の建材

木は手触りがよく、温かみがあり、見た目の風合いもいい。これが木の家の最大の魅力ともいえるでしょう。

木を構造体に用いた木造の家も、一般的にはボードなどの仕上材で柱や梁をおおってしまうため、構造体の木は、直接目で見えません。そこで、可能な範囲で柱や梁の室内側を現しにする部分を設けると、木の魅力が出てきます。

 

鉄筋コンクリート造のマンションを改修した事例
鉄筋コンクリート造のマンションを改修した事例。仕上材や造作材をふんだんに使うことで、木ならではの温かみが

また、仕上材や造作材に木を使えば、ダイレクトに木の家の魅力を感じることができます。仕上材や造作材に木を使っていれば、構造体が鉄骨造や鉄筋コンクリート造の住宅・マンションなどでも、木の家の魅力は十分に実現することができます。

ちなみに、プラスチックやシート貼りの仕上材など、石油化学製品を使った新建材。こちらは、静電気が比較的発生しやすいので、ホコリがつきやすく、経年で黒ずんだり汚れたりしやすいです。対して木は、静電気が比較的発生しにくいため、ホコリがつきにくい傾向に。掃除や手入れをしていれば、年月がたっても色あせず、風合いのよさを保てます。

また、木の樹種にもよりますが、杉などは、新築から数年たつうちに白木の色合いから深みのあるベージュ色に変化していき、色つやがよりよくなっていきます。こうした「古びてなおよくなる」経年変化を楽しめるのも、木の家ならではの魅力です。

 

メリット5.メンテナンスさえ配慮すれば長持ちする

木の家のダイニング

構造体に木を用いた木造の家は、湿気による腐りや、シロアリによる被害に注意が必要です。とくに、地盤面に近い床下部分は、湿気やシロアリの被害にあいやすい部分。通気をよくし、防蟻対策を行い、定期的に点検をすることが大切です。

ただ、そうした配慮をすれば、木造の家は鉄骨造や鉄筋コンクリート造に劣らない耐久性をもつと言えます。現存する世界最古の木造建築である法隆寺が、約1400年経った現在でも美しい姿を保っていることを思えば、イメージしやすいでしょうか。

 

カラマツ無垢フローリング
カラマツ無垢フローリングの事例

仕上材・造作材としても、木は長持ちする特長があります。たとえば、床をビニル系のシート貼りの複合フローリングとする場合。表層のシートが傷めば、下地が見えてきて交換せざるをえなくなります。

しかし、無垢の木によるフローリングなら、表層に傷ができたりへこんだりしても、見た目はさほど変わらず、長年使い続けることが可能。木の家なら、経年劣化によるリフォームコストを軽減できます。