●見た目が男性になるたび、被害がなくなって生きやすくなった
すべての画像を見る(全5枚)私は今、裁判が始まった頃とは随分と違う体つきをしています。女性の体から男性の体に近づいたのです。私は、私の心に体を近づけました。男であった私は体まで男に戻りつつあります。
腕も肩幅も、筋力をつけてゴツくしました。今、先に書いたような被害件数はゼロとなりました。ただ、これは体格や外見だけの問題ではなく、30代半ばになり、情緒が成長し、人づき合いの方法が落ち着いてきたおかげもあると思います。
社会に出てフリーランスになってから今年で10年になりますが、私は自分の生き方に後悔はしていません。もちろん、女の体であったときの自分もまったく嫌いではないです。ただ、今の男らしい自分の方が、楽で、楽しいです。
●理解のある夫でよかった
私は幼少期の頃から、性自認は男性であり、恋愛対象も女性なのだと気づいていました。
しかしそれが小学校、中学校、高校と進学するたび「普通はこうである」という幻想に囚われ、「男性とつき合わないといけない」と無意識に感じるようになりました。大学まではまだよかったのですが、社会人になり自由度が増したとき、友達として気軽に同性とつき合っているつもりが、男性からは「女性が近づいてきてくれた」と思われ、体を執拗に触られ、悩んだものです。
今では、体が変わるたび、やっと見つけた自分の居場所に近づいていける気がして嬉しいです。やっと自分に戻れるのだと思うと、自然と笑顔が増えました。心と体が合致していると人生は楽しくなれるんだと、数年前に気づきました。
ちなみに、夫は男性でありながら私を性別で捉えず接してくれ、トランスジェンダーをカミングアウトしたときも受け入れてくれました。夫自身、男性でも女性でもないエックスジェンダーだったので、そもそもの性へのこだわりがありませんでした。私が、「体を男に戻したい」と言ったとき、「かっこいい」とすら言ってくれたのです。
こういう理解のある夫のおかげで、どんどん自由になれています。これからも自分の心が楽な方に、外見や環境を変えていけたらいいなと思っています。