年齢を重ねると、どんなにしっかりした人でも多少は物忘れが多くなってくるのは必然。アルツハイマーも気になるところ。40代のライター・フネさんの70代の母親は、急に2日分の記憶をなくし、「一過性全健忘」と診断されました。そのときの母の様子と家族がとった行動、気をつけるべきことについて詳しく伺いました。
すべての画像を見る(全3枚)【1】突然の父からの電話で「母の記憶喪失」を知る
それはある日、関西に住む父からの電話でした。大事なことを伝えるときの低い口調です。
「お母さんが変や。昨日のことをまったく覚えてへんし、今朝から同じことを何度も何度も聞くんや」
●同じことを何度も質問する母に異常を感じた父
詳しく話を聞くと、朝から
・今日はゴミの日ではないか
・今日は何日か
・今日は何曜日か
といったことを、父がカレンダーを示して教えても何度も聞くというのです。
「それ、アルツハイマーの典型やん」と思わず口に出ました。
私は「ついに来たか」という思いと、「え? 母が先?」と戸惑いました。父はすでに80代ですがしっかりしています。母は父より8歳若く、さらにしっかり者だからです。
【2】なんの予兆もなく丸2日分の記憶が消えた母
昨日の夕飯なら40代の私だってすぐに出てこないことがあります。でも覚えていないのは、普通なら忘れるわけがない前日のワクチン接種のことだったり、お隣のご婦人と出かけたりしたことだったのです。
●前日の夕飯や、前々日のお出かけの記憶もない
始まりはワクチン接種した次の日の朝、父が母に「副反応はどうや?」と聞いたところからです。
「なんのこと? ワクチンなんて打ってない」
「なに言うてんねん、一緒に3回目受けに行ったやないか」
いくら詳細を説明しても覚えていない様子。もちろん夕飯(てっさ、てっちりだったのに!)も思い出せず。
記憶をたどると、そのさらに前日のお出かけも覚えていませんでした。
「こ、これはいかん!」と心配した父はとりあえずかかりつけの病院に連れて行き、その後私に連絡してきたのでした。
私は早速ネットで検索。「記憶がない 丸2日」などと検索するとまず出てきたのが、一過性全健忘(TGA)という症状でした。
脳神経内科の先生が説明している記事を父に送ると、「(症状は)この先生の言うとおりです」と返事が。
【3】家族がとった行動と経過
突然の母の記憶障害。その時家族がとった行動をまとめました。
●(1)発症当日:かかりつけ医に連れて行った
父はとりあえず、近くのかかりつけ医(内科)に母を連れて行きました。そこでは「一瞬脳の血管が詰まったのだろう」と言われたそうです。
一過性全健忘の話は出ませんでした。血栓予防の血流をよくするお薬が処方されました。
●(2)発症夕方~夜:母と電話で直接話し脳に刺激を与えた
私と話すことがどれほど脳に刺激を与えるかはわかりませんが、静かな二人暮らしでコロナ禍、少しでも別の刺激をという父の考えです。記憶障害のことには触れず、ただ「調子はどう?」と電話しました。
私の息子・娘も協力。「(母は)いつもと変わんなかったよ」とのことでした。
●(3)翌日:県内の有名な脳外科を受診
ワクチンの副反応で発熱症状が出ていた母。病院内に入ることができず、受付や診察は駐車場の車内で行われました。
そこで、おそらく一過性全健忘(TGA)だろうと言われました。
●(4)後日MRIを受ける
1週間後にMRIを受け、その当日結果説明。脳には血管のつまりやアルツハイマーにみられるような委縮はなく「とてもきれいな状態」だったそう。診断はやはり一過性全健忘でした。
以前かかりつけ医に出されたお薬は飲まなくてよいとのこと。安心して帰宅しました。