ペットの柴犬の写真をツイッターに投稿し続け、その自然体のかわいさが人気となっている
。
ESSEonlineでは、飼い主で写真家の北田瑞絵さんが、「犬」と家族の日々をつづっていきます。
第4回は、ほっこりさせられたり驚かされたりする、犬のさまざまな寝姿について。
どんな表情も姿勢もたまらん!犬の寝顔コレクション
眠る犬にくっついてテレビを見るのが至福の時間だ。
すぅすぅすぅすぅ…と繰り返される小さな寝息がそばで聞こえてきて、そのぬくもりに触れながら好きなテレビ番組を見ていたら、欲しいものはもうないなと思うほどに満たされる。
すべての画像を見る(全42枚)9月も後半に入ると涼しくなってきて、犬が日中を庭で過ごす時間も増えてきた。
秋の始まりは犬にとっても過ごしやすくて寝心地がいいのだろう。夏場は減っていた食欲も元に戻ってよく眠るようになり、元から快便だがより便通がよくなって、これぞ健康体! といった状態である。
犬は日々、睡眠の秋を満喫している。
眠る犬を眺めていたら安心する。
でも「寝顔なら何時間でも見ていられる」と話しているが、大げさに言っているわけではなく事実、時間を忘れていつまでも見ている。
今回はこれまでの回覧板よりも写真を増やして、犬の寝顔コレクションを紹介していこうと思う。寝ている犬の写真が多くありすぎるからだが、あれもこれも見せたいと欲ばっているので、どうかおつき合いいただけたら幸いです。
●観察しがいのある犬の口元
まずは寝顔のどこをそんなに見ているのかというところから。
もちろん全体像を見ているが、とくに口元は観察しがいがある。眠っているときにうっすら口が開いているときがあって、そのときに舌がひょっこりはみ出していたり、歯が見えているときがある。
犬歯は起きているときでもよく見えるが、ほかの歯は意外と見ることがないのでレア度が高い。米粒よりも小さな前歯を眺めていると、なんだか犬が生きていることをしみじみ感じる。
●信じられない姿勢で寝る犬
続いて、信じられないシリーズ。これは不意打ちでくるので要注意だが、たまにどうしてそうなったと言わずにはいられない寝方をしている。
出かけようと玄関をあけたときだった、犬の上にイチゴのクッションがのっかっていた。
信じてもらえないかもしれないが、私やだれかがクッションをのせたとかではない、犬に誓って嘘ではない。
「犬がクッションの下に潜り込んだ? そして重くて動けない? いや綿の抜けたクッションなんて犬にしても軽いはず、よくこのクッションを振り回しているし……」
二度目の確認だが、犬の上にイチゴが乗っかっていて、当の犬は寝ている。とりあえずカメラを取りに、家のなかに引き返したのだが、戻ったときには犬は目を覚ましていた。
写真に写っている犬は一応起きています。けれどまだ寝ていたいのか同じ体勢のままイチゴにのっかられていた。
「いやどんな寝方!?」とっさに声が出ていた。振り返ったらこの状態で、あおむけに寝ていると理解するまで一瞬ヒヤッとした。
たまに犬は寝返りを打ってあおむけに寝ていることがある。
家にやってきてから一年くらいはあおむけで寝る姿を見たことがなかった。まだまだ家族に気を許していなかったということだろうか。
最初に目撃したのは母で、それから数日たって私も見て、だんだんとあおむけに寝る犬も日常となっていった。
●犬に寝られない場所はない
犬はどこでも寝る。
山で母と農作業をしていたときに、ふと犬を見ると、体に一切の力が入ってませぇんと言わんばかりに山と同化するように寝そべっていた。
そしてまた別の日、ベッドにしている草はちょうどいい弾力もあってふかふかして、体を預けやすかったのだろう。
山でも寝る、そんな犬に自宅の中で寝られない場所なんてそりゃあない。家の中での寝場所は1つに決まっていなくて、犬がその時々の気候に合わせてちょうどいい適当な場所を見つけている。
犬を撮るためにしゃがんだら式台やゲタ箱の下で、最近ないなと思っていたオモチャを見つけることがよくある。
●2017年12月31日
新年を迎える0時ちょうどに私と妹はジャンプしている。小学生の頃に『うたばん』で、Gacktさんが新年を迎える瞬間にジャンプしてると話しているのを見てからマネするようになり、現在まで続いている。
この日も飛ぶ予定で、紅白を見ながらそのときを待っていた。妹が好きなバンドの出番を見て満足したのか「寝る、起こして」と言うと、電池がきれたようにぱたりと寝てしまった。
すると、そのときまで自分のクッションの上で寝ていた犬がのっそり体を起こして寄ってきた。
犬は眠そうにしながら妹の身体をまたげば、左側に背中をぴったりくっつけて横になった。聞こえてくる寝息が2人分になった。
紅白も終わり除夜の鐘が始まったので妹に声をかけた。寝ぼけながらも、となりの犬に気づくと「かわいい」となでていた。
それから「なんでやろう、めっちゃよく眠れた。犬がぬくいからかなぁ…」と話していたのだが、犬のそばで寝るとものすごく深い睡眠を得られることがまれにある。
愛犬の体温が落ち着くというのもあるが、疲れやストレスを一時的に軽くするようなヒーリング効果でもあるのではないだろうか。
そして我々はジャンプして年を越した。
今年の8月のなんでもない日のことだ。
昼寝中の犬の寝顔を眺めていたら眠くなってきて、横で同じく昼寝をしていた母がかけていた布団に足を入れさせてもらった。うとうとしていたら、犬が立ち上がってきて布団の上から母と私の間になかば強引に体を入れてきて、そこで昼寝を再開した。
この出来事を妹にLINEしたところ、あんたみたいやなと返ってきた。
私は生活に支障が出るほど忘れっぽい。いやだった会話も楽しかった日も、そんなこともあったかもしれないと輪郭すらぼんやりとしか覚えていなくて、肝心の中身は少しも思い出せないということが異常に多い。
だけど写真を見ればそのときの状況や会話、温度がふっとよみがえる。毎日毎日、犬の写真を撮っている動機は、過ぎていく現在への未練だろう。
これでも厳選したのだが、困ったことに見てもらいたい寝顔コレクションがまだまだあるし、犬と母や妹が同じ部屋で眠る姿に思うところがあって書きたいことが少しある。
また忘れた頃に寝顔コレクションvol.2を行うので、そのときはよろしくお願いします。
●2018年9月4日
台風21号の被害を受けて、わが家もだいたい13時から21時頃まで停電した。初めはすぐ回復するだろうとのん気に構えていたが、日が沈んで外が暗くなっても電気は使えないままだった。
懐中電灯で身の回りは照らせるし、断水はしていなかったのでトイレも使える、食料もある、それでも夜になるだけでこんなに心細いのかと生理的に恐怖を感じた。
犬もいつもと違う家の様子になにかあったと察しているようで、私の不安が伝わってはいけないので、明るくいようと笑って過ごしていた。しっかりせねばと思わせてくれる犬がいてくれて気持ちを保つことができて逆に助けられた。
19時半頃、少し部屋が蒸し暑かったのでうちわで犬を扇いでいたら母がこちらを見て笑い声をあげた。なにかと思って犬を見ると……
今夜はもうこのままかなと思っていたそのとき、電気が回復した。「電気がきたぞ~!!」と、大歓喜だ。
だけど、電気がついたときの犬の安堵の表情からやはり相当怖かったのかとあらためてうかがえて、申し訳なさから胸が痛んだ。
今回の停電を経験するまでは、懐中電灯は家族の人数分以上にあるし、一時的にしのげたらいいだろうと考えていたが、その一時的な疲労やストレスが大変な負担になれば、尾を引くことも知った。
もちろん非常袋や非常食を備えてはいるけれども、当たり前だと言われるかもしれないが緊急事態の備えは過分なほどに余裕をもって準備しておいた方がいいと思い直して、まずは翌日ランタンを購入した。家にあった懐中電灯よりもずいぶん明るい。
暗闇の中でも犬の顔がよく見える。
もちろん、どこにも、だれにも、天災が降りかからないことがいちばんだ。
【写真・文/北田瑞絵】 1991年和歌山生まれ。バンタンデザイン研究所大阪校フォトグラファー専攻卒業。「一枚皮だからな、我々は。」で、塩竈フォトフェスティバル大賞を受賞。愛犬の写真を投稿するアカウント@inubotを運営