新しく家を建てるなら、緑を身近に感じたい。そう思うなら、シンボルツリーを植えてみましょう。これまで、数多くの住まい手と一緒に庭木販売店にも足を運び、木々の選定にも立ち会ってきた一級建築士の守谷昌紀さん。自身の設計した家を事例に、5つの樹種を解説してくれました。小さな庭でも大丈夫。植物と暮らす家づくりの参考に!
すべての画像を見る(全37枚)ジューンベリー:花、実、紅葉と3つの楽しみが
最初の事例は、木造3階建ての都市型住宅です。この家では、シンボルツリーにジュンーンベリーを選びました。
2階にあるアウトドアリビングは、イタウバという木のルーバーで覆われています。ルーバーは無塗装とし、自然な色の変化を楽しむことにしました。
その開口部からすぐに見下ろせる位置にシンボルツリーを植えています。
2年たつとルーバーの色も落ち着き、ジューンベリーもしっかり葉をつけました。
この木はとにかくお得な木で、花、実、紅葉が楽しめるのです。
ベリーというくらいなので実がとてもおいしい。ほうっておくと鳥がどんどんついばんでいくので、その前に収穫します。
すりつぶしてジャムに。
成長が比較的ゆっくりなのも、都市型住宅向き。3拍子そろったシンボルツリーのある暮らしは、より季節が身近に感じられるはずです。
本場のクリスマスツリーから常緑のヤマボウシ:常緑を楽しむ
2つ目の事例は、閑静な住宅街に建つ都市型住宅です。
「パリのアパルトメント」というコンセプトの鉄骨3階建ての住宅で、当初はシンボルツリーにドイツトウヒを選びました。ヨーロッパトウヒとも呼ばれるモミノキの仲間で、ヨーロッパでクリスマスツリーとして使われる樹種です。
パリのアパルトメント風ではなく、本物のパリを目指しました。玄関扉は、100年前あたりに南仏で使われていたものを、アンティークショショップで購入しています。
家具や内装にもこだわっています。
夫妻と一緒に探しに行った庭木屋さんで、これぞクリスマスツリーという1本を見つけました。
そして1年目の冬、かねてからの念願がかなったのです。
ところが3年後。酷暑の夏があり耐えきれずに枯れてしまいました。フランスもドイツも、日本より北にあります。本来は森を形成している木なので、1本立ちは枯れるかもという懸念はありました。
西向きという厳しい条件もありましたが、2年が経過していたので、大丈夫だと思っていたのですが…。
非常に残念でしたが、夫妻と庭木屋さんを再訪。今度は常緑のヤマボウシを選びました。
常緑のヤマボウシは月光とも呼ばれます。
ドイツトウヒよりは強い木ではありますが、庭木屋さんのアドバイスで、足下に下草を植えました。そのことで、土の乾燥はかなり変わってくるのです。
この家にはどんな姿の木が合うか、また、どんな木を植えたいか。そこはもちろんこだわりたいポイント。しかし、環境と樹種の特徴も合わせて選定することが、やはり大切なのです。