睡眠不足が重なると、病気のリスクが高まるという「睡眠負債」が注目されています。
厚生労働省の調査では、日本人の平均睡眠時間は6~7時間がもっとも多く、6時間未満も増加傾向(平成27年 国民健康・栄養調査)。「日中に眠気を感じる」「寝ている途中に目が覚める」という悩みが多く挙げられています。
室温だけを気にするのは間違い!?快眠セラピストが教える、睡眠の質を上げる寝室環境づくり
寝るときはエアコンをつけているという方も多いかもしれませんが、睡眠を妨げる原因は室温だけではありません。
「寝室の空気の汚れやホコリ、ダニが快眠の妨げになっていることも」と語るのは、睡眠に関する数々の著書がある快眠セラピストの三橋美穂さん。睡眠の質を上げる方法を教えていただきました。
●熟睡のための5つのポイント。眠りが浅いと肥満やうつのリスクも
「質の高い睡眠を得るためには、5つのポイントを整えることが重要です」と三橋さん。
<熟睡のための5つのポイント>
(1)寝室を快適な環境にする
(2)就寝前にリラックスする
(3)体温のメリハリをつける
(4)体内時計を整える
(5)活動的に過ごして疲れをためる
「そのなかでもとくに重要なのは、(1)の寝室を快適な環境に整えること。部屋が暗いほど熟睡ができます。常夜灯がついているだけで睡眠が浅くなり、肥満やうつのリスクが高くなると言われています」
就寝の際は照明を消して、どうしても明かりがほしいときはフットライトなど、直接目に入らない間接照明を使いましょう。
(3)「体温のメリハリをつける」につながるのが、布団の中の温度。就寝の際にエアコンをかけっぱなしにしている人も多いと思いますが、じつは室温よりも布団の中の温度がポイントとなります。
「布団の中は、体温に近い33℃が理想的。しっかり布団をかけたうえで、エアコンの風が体に直接当たらないように、室内に空気を循環させましょう」
●寝室の空気をキレイにすることが質の高い睡眠への近道
また、(1)「寝室を快適な環境にする」、(2)「就寝前にリラックスする」という項目を阻害しているのが、寝室の空気の汚れ。
「エアコン内部が汚れていると、ホコリやカビが排出されるので、その空気を吸うと咳やくしゃみなどの原因となり睡眠を妨げます。フィルターを掃除するだけでも改善するので、掃除機などを使って掃除をしましょう」
空気清浄機をエアコンの対面に置けば、排出された汚れた空気を効率よく清浄してくれます。年に一度、エアコン本体内部の洗浄を専門業者に依頼すると、よりきれいな空気に。
●寝返りは睡眠の質を上げる重要な要素。寝室に置くものは厳選して!
掃除をすることの効果は、ほかにもあります。
「たとえば、『寝返り』は筋肉をほぐしたり、血行をよくするなど、睡眠の質を高めるための重要な要素。ですが、枕元や寝具の周辺にものを置いたりすると、寝返りを妨げてしまいます」
また、寝室にものが多くなると綿ボコリをため込むこととなり、睡眠中に吸い込むことになります。ホコリ1gにはダニが約2000匹いると言われ、アレルギー症状の原因になりますので、寝室にはなるべくものを置かず、丁寧に掃除するようにしましょう。
それが、寝室を快適な環境に整え、ひいては安眠することにもつながります。
●寝具の手入れは、「洗う・吸う・干す」でダニを駆除!
家庭内のダニアレルゲン(ダニのフン)の生息数の調査結果によると、ダニアレルゲンがいちばん多かったのは寝具回りでした(ダスキン調べ)。
家庭で見かけるダニの大半は「チリダニ」。噛んだりしないものの、ダニの生体よりもフンや死骸が体によくありません。
ダニのフンや死骸は、ホコリに混じって空気中に舞い上がるので、その前に除去するのがベスト。
洗える布団は、まず洗濯すること。ダニのフンや死骸は水溶性なので、洗濯で洗い流せます。洗濯ができない場合は掃除機で吸い取りましょう。1平米あたり20秒ぐらいかけて、ゆっくりと吸い取ります。
なかなか時間がないという人は、宅配便を使って布団を丸洗いしてくれる業者に依頼する方法もあります。
●布団は天日干しする。花粉や黄砂が気になったら部屋干しでも
布団を天日干しすると、ふわふわになって気持ちがいいもの。
「布団は湿気を吸うので、雨が降ったあとや早朝や夕方は避けて、朝10~14時ぐらいの間に干しましょう。湿度はお昼前から急激に下がりはじめ、14時ごろにもっとも低くなります」
布団の両面が陽に当たるように裏返すことも忘れずに。布団を強くたたくと中綿が傷んだりするうえ、ダニが反対面に逃げるだけなので、ホコリを払うようにしてください。
ホームセンターなどで販売されている「布団干しラック」を使うと、室内で干すことができます。花粉や黄砂が飛散する時期にも便利。
シーズンオフは、干したあとの布団を湿気のない押し入れの上段に保管しましょう。除湿器や扇風機での換気もときどき行うと効果的。スノコを敷くと風通しがよくなります。
収納場所が少ない場合は、布団圧縮袋を使えば省スペースに。
寝室を快適なリラックスできる空間に整えて、朝までぐっすり眠りましょう。