●義両親との最後の別れ

年配の男性と女性
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私は自宅に戻ると、前日の夜に用意した荷物を持って義両親のもとへ向かいました。

「お義父さん、お義母さん、大事なお話があるんです。私、今、○○さん(夫)と離婚して、離婚届けを出してきました」

私は義両親に離婚の経緯をかいつまんで話しました。

夫が自己破産するので、偽装離婚を提案されたこと。夫が5年以上にわたって風俗に金をつぎ込み、その証拠のデータを見つけたこと。離婚してこれから出ていくこと。私がこの2年間、夫の仕事を無給で手伝っていたこと。夫がほとんど事務所に来ず、昼間からソープ通いをしていたこと…。

義両親は驚き、そして私の話を信じてくれました。そうです、この20年、私と義両親の関係はとても良好でした。働きの悪い夫を、私が経済的にカバーしているのを2人は知っていました。それだけではなく、私たちはほどよい距離を保ちつつ、互いに思いやりをもって接してきました。

思い返せば20年前、再婚の挨拶に行ったとき義母がこう言いました。

「○○(夫)が、お嫁さんと孫を一緒に連れてきてくれて嬉しいわ」

私は心から悲しくなりました。これを最後に、義両親2人とは会うことはないのですから…。

●本当にバッグ一つで逃げるように家を出た

私は義母のこの言葉を一度も忘れたことがありません。息子は義両親にとって、血のつながった孫ではありません。でも心からかわいがってくれました。

義母は私が残業で遅くなると、連絡しなくても息子に夕ご飯を食べさせ、義母の部屋で息子と布団を並べて寝てくれました。息子も「おじいちゃん、おばあちゃん」となつき、義両親の部屋で3人で楽しそうに過ごしていました。義母は息子が高校生になっても、息子のためにメロンパンをきらしたことがありません。息子がスポーツでプロを目指すかどうかで悩んだ時、「やる前からあきらめちゃってるよ」と言って後押ししてくれたのは義父でした。2人は息子を心から愛しみ、応援してくれたのです。

「どうか息子のことは、この先も孫だと思ってくださいませんか。お願いします」
「当たり前だよ。息子くんがいなくなるなんて、そんなのは困るよ…」

義両親は今にも泣きそうでした。
私は呆然と見送る2人を残して家を出ました。持ち物はバッグ一つ。20年で積み上げたたくさんのものは、すべて置いてきました。

私は足早に最寄り駅に向かいました。今にも夫に腕をつかまれそうな気がして、最後はほとんど走っていました。とにかく電車に乗ってこの街を離れよう。当時一人暮らしをしていた息子と合流して、離婚したこと、夫が息子の本当の父親ではないこと…いろいろと伝えなくてはなりません。

そして、これからのことを2人で考えるのです。電車に乗りさえすれば、その先に待っているのは息子と未来です。急ごう!
離婚を決めて、本当に大変だった一週間のことは、この先も忘れることはないと思います。