コロナウイルス流行第2波に備えるために、私たちはなにに気をつけて生活すればいいのでしょうか。

長年に渡って一般住宅、大学病院、老人介護施設など異なる環境に存在する「真菌・細菌・ダニ・微小昆虫」などを総合的に調査・研究してきた博士(農学)の川上裕司さんは「ヒトが本来持っている免疫力を高めることがいちばんです」と唱えています。詳しく伺いました。

ヨーグルトを食べる女性
食生活を工夫して免疫力アップを
すべての画像を見る(全4枚)

日々の生活でできるコロナウイルス対策。夏季に免疫力をつけておくのが大切

インフルエンザウイルスと同様に、新型コロナウイルスも、飛沫感染と接触感染が主たる感染経路です。冬季の暖房によって乾燥した密閉空間より、夏季の開放的な屋外の方が空気感染のリスクは低め。
気温30℃・湿度50%以上の高温多湿な夏季にこそ、免疫力をつけておきましょう。

●免疫とはなにか?

免疫とは、読んで字のごとく「疫病から免れる」ことですが、外界から体内へ侵入してくる病原体や体内で発生する悪性新生物(ガン細胞)に対して、免疫細胞の働きによって攻撃して取り除くことを適宜行って、健康な身体を維持する大切なしくみです。
感染症から身体を守る、同じ病気に二度とかからないようにする、ワクチン接種に効果が出るというのも、免疫の働きです。

●免疫力を高めるために腸活が有効

具体的に、新型コロナウイルス感染症対策として、どのようにして免疫力を高めればいいのでしょうか? きっと読者の皆さんもWebや雑誌などの情報からすでに「新型コロナウイルスに勝つための免疫力アップ」といった情報を耳にしていることと思います。
「十分な睡眠、バランスの良い食事、そして、適度な運動」がほぼ共通する免疫力アップの方法で、筆者もこの考えに同感です。

免疫力を高める食品類・項目ごとの一覧
表12

バランスのいい食事については、表12をご覧ください。あくまで参考ですが、筆者が常食し、だれでも無理なく摂食できる食材を黄色のマーカーで示しました。とくに、夏バテも気になる時期ですので、意識的に摂食することをおすすめします。

腸活を代表する用語に、プロバイオティクス(probiotics)が挙げられますが、これは、抗生物質(antibiotics)に対比する用語で、共生を意味するプロバイオシス(probiosis;pro ともに、~のために、biosis 生きる)が語源です。イギリスの微生物学者Fullerが1989年の定義した「腸内フローラのバランスを改善することにより、有益な作用をもたらす生きた微生物」の意味です。今では、善玉微生物を含む食品(ヨーグルトや乳酸菌飲料)自身をプロバイオティクスと呼ぶのが普通になっています。

プロバイオティクスの持つ有益な作用として、「下痢や便秘を抑える」「腸内の良い菌を増やして悪い菌を減らす」「腸内環境を改善する」「腸内の感染を予防する」「免疫力を回復させる」という5つの作用が定義されています。毎日、意識的に乳酸菌入り食品を摂ることは、筆者が15年以上続けている経験からも強くおすすめめします。

●適度に運動してストレス解消することが大切

ストレス解消に役立つとされている栄養素
図36

とくに筆者が強調したいことは、ストレスを溜めないことです!
図36に、ストレス解消に役立つとされている栄養素をまとめてみました。異例な状況だからこそ、日頃あまり気にされていない食べ物とその食べ物がもつすばらしい栄養素の働きに目を向けてみるといいでしょう。とくに、「私は神経質な方で感染が気になって仕方がない」と自覚されている方は、食べ物にこだわることが一番のストレス解消になると思います。

日常生活で免疫力をアップさせるためのストレス解消法
図37

図37に筆者がお伝えしたい日常生活におけるストレス解消法を示します。「可能な限り3密を避けて、人込みの中ではマスクをして、うがい・手洗いを励行すれば」過剰反応して家に閉じこもったりする必要はありません。むしろ、長期の自粛要請で、外出することが億劫になっている心理状態の方が問題です。

図37に示したのは日常生活に関わることですが、夏季~秋季は、行楽に最適な季節です。海へ、山へ、そして、静かな日本の原風景を求めて京都や奈良を散策してみるのもいいでしょう。生活をできる限り普通に戻し、気持ちを楽にすることがなにより大切です。

※本記事は、「

新型コロナウイルス感染症対策~IPM研究室~環境微生物学の研究者~の立場から~

」の内容を一部抜粋・要約したものです。「免疫システム」についてさらに知りたい方はこちらもぜひチェックしてください。