作家・作詞家として活躍する高橋久美子さんによる暮らしのエッセー。今回つづってくれたのは、コロナウイルス感染が拡大し、外出自粛が進む今だからこそ楽しめることです。それは、久美子さん自身も大好きな音楽でした。

第17回「やっぱ歌でしょう!」

暮らしっく

●ギターを弾いて歌ってみたら、ちょっとずつ憂鬱が晴れていった

世界中が家での生活を続行しなければならない事態になって数週間がたつ。自分の家族や友人がウイルスに感染したというわけではないのに気づけば精神的な疲れがたまってきている。日に日に増える数字、スーパーの行列、ちょっと喉が痛いな、もしかして…なんて、緊張状態にふさぎこんでしまっている人も多いのではないだろうか。

そんなときは、SNSやテレビの情報を見る回数を減らして、どうしたらラクに過ごせるのかを考えるのも大切なこと。今は確かにがんばりどきだ。みんなで我慢をして、家でじっと終息を待つ。私も原稿締めきりは相変わらずあるが、出演予定のイベントが軒並み延期になり、ぽっかり時間ができてしまった。
夫も打ち合わせ等が延期になって家で過ごす事が多くなった。ずっと夫婦ともに多忙だったので、家で一緒にのんびり過ごすなんていつぶりだろう。この機会に片づけを、掃除を、衣替えをというのもいいが、こんなにゆっくりできる機会を大切にしたいと思った。

先日の日曜日、のんびり昼食を終え、二人の好きだったロックを大きめにかけた。Oasis、Strokes、Red Hot Chili Peppers、QUEEN、NIRVANA、PHOENIX…。
「この曲大学時代流行ったよねえ」「ここのソロが格好いいんだよなあ」
お酒を飲み飲み、気づけば、何年ぶりかにギターを取り出して、下手くそだけど弾いていた。かき鳴らすとちょっとずつ憂鬱が晴れていく。交互に弾きながら歌ってみた。体の中から嫌な気が出ていくのがわかる。ああ、歌うってなんて健やかなのだろう。

おや? 隣の家からトランペットの音が聞こえる。私たちのギターを聞きつけたのか、隣の家の吹奏楽部のお兄ちゃんがトランペットを吹き出したのだ。しばらくすると、前の家からピアノが。イタリアみたいにみんなで一曲を演奏とはいかなかったけれど、方々から音楽が聞こえる楽しい時間だった。

●どんな楽器でもいい。手づくり打楽器で音を出してみよう

ギターと手づくりの楽器
ギターと手づくりの楽器

楽器ができなくたって大丈夫だ。声という楽器がある。カラオケボックスに行くことも難しくなった今、思いきって歌えばいい。歌は人を解き放ってくれる魔法のお薬だと思った。You Tubeでもピアノ演奏なんかをアップしてくれている人がいるし、歌詞がわからなければ歌詞のサイトを開けば出てくる。もちろん隣近所との関係もあるでしょうから、声のトーンはお気をつけて。もし、鍵盤ハーモニカが家にあったら吹いてみるのもいいね。

ダンボールでつくったカホーン
ダンボールでつくったカホーン

そうそう、小物の打楽器なら、簡単につくれるのでご紹介しよう。以前、子ども向けのワークショップをして好評だったのが、即席の打楽器づくりだ。
たとえば、カホーンという箱型の打楽器がある。木箱にまたがり、足と足の間の箱そのものを叩く楽器だ。これ、しっかりした縦長のダンボールなら(ただし大人が座ると潰れるので注意)つくれるよ。裏側に、直径10cmほどの穴を開けると音が抜けて本格的な打楽器に(しっかりガムテープで補強すること)。

私は吹奏楽部少女で、中学時代はクラリネットをしていたけれど肺が弱くて高校からは打楽器に変更し、その後もドラムを叩いていたので打楽器は大好き。机を叩いただけでも打楽器。コップをお箸でチーンチーンとやれば、これまたトライアングルのような打楽器。手を叩くのだって打楽器。ようするに音が鳴ればなんだって打楽器!

ペットボトルやあき缶に、大豆や米を入れてしっかりフタをして振れば、シェイカーやマラカスのできあがり! 私も、ときどきライブでシェイカーを忘れてしまうときがあって、缶コーヒーを飲み干して、そのへんの石ころをかき集めてつくった即席楽器で演奏することがある。それが案外いい音がするんだなあ。

●家族みんなで前向きに過ごせるのが楽器。音を楽しんで

ぜひ家族で演奏会をやってみてほしい! ギターやピアノなんて弾けなくて大丈夫。みんなで歌って、そこに即席の打楽器を鳴らせばカラオケさながらに楽しい時間になる。飽きたらシェイカーの中のお米や大豆は夕飯に食べればいいのだ。
米や大豆はペットボトルに50gでいいだろう。あまり軽いと振りにくいのと、量によって音は変化するので、好きな量に調整して自分の好きな音を探してみよう。庭に砂利などがある家庭は、砂利もなかなかいい音がしますよ。いろいろな素材で試してみてください。

シェイカー

缶コーヒーのような缶素材の方が粒立ちのいい音がする。マンション等で小さめの音がいいときは中は米が最適。「いろはす」のように側面に凸凹があるペットボトルなら、お箸でそこをこすればギロという楽器になって、二役の楽器になる。同じ形のガラスコップがたくさんあるなら、水の量を少しずつ調整してドレミファソラシドをつくって遊ぶのも楽しい。工夫次第で家の中でも音を楽しむことができる。

なるべく楽しく前向きに過ごそう。ライブやコンサート、演劇やお笑い、舞台で楽しませてくれていた人々と再会できる日を待ちわびながら、それぞれの歌を歌おう。

【高橋久美子さん】

1982年、愛媛県生まれ。チャットモンチーのドラムを経て作家・作詞家として活動する。主な著書にエッセイ集

「いっぴき」

(ちくま文庫)、絵本

「赤い金魚と赤いとうがらし」

(ミルブックス)など。翻訳絵本

「おかあさんはね」

(マイクロマガジン社)でようちえん絵本大賞受賞。新刊の詩画集

「今夜 凶暴だから わたし」

(ちいさいミシマ社)が発売中。原田知世、大原櫻子、ももいろクローバーZなどさまざまなアーティストへの歌詞提供も多数。NHKラジオ第一放送「うたことば」のMCも。サイン入り詩画集の予約やトークイベントなどの情報は公式HP:

んふふのふ