こんにちは。エッセイストの甲斐みのりです。全国各地に根づく、その土地・その店ならではの、なおかつ昔ながらの懐かしい雰囲気のあるパンを“地元パン”と名づけ、食べ歩く日々を送っています。
それらをまとめた書籍『地元パン手帖』で紹介しきれなかった全国のパンを、こちらでご紹介します。
今回は、和歌山県「室井製パン所」の昔懐かしいパンです。
「バタークリームロール」や「ミルティ」…。和歌山県のスーパーには「室井製パン所」のパンがどっさり!
5年ほど前から、仕事を通じて和歌山県田辺市に通うなかで、隣町・みなべ町の「室井製パン所」のパンを知りました。
和歌山県田辺市の名産品は、梅とミカン。田辺市の梅・ミカン農家の友達と宴席で“田辺ならではの食”の話になったとき、「繁忙期はスーパーで室井製パン所の菓子パンをどっさり買ってきて、休憩時間にみんなで食べる」と聞きました。
確かに、田辺市のスーパーをのぞいてみると、パンコーナーには室井製パン所のパンがどっさり。それを次々、買い物客がカゴの中に入れていきます。
●創業64年!地域で親しまれてきたパンたち
室井製パン所があるのは、田辺市の隣町で日本一の梅の里、みなべ町。戦後間もない昭和29年に創業し、現在は3代目が受け継いでいます。
工場併設の販売所でも焼きたてのパンを販売していますが、スーパーや保育園などの卸売りが多く、地域の人は朝食だけでなくおやつ代わりに、室井製パン所のパンを味わいます。
なんと言っても店頭売りの菓子パンの価格は、そのほとんどが110円! 創業当時はパン1つ、10円で販売していたそうです。
子どもからお年寄りまで。地元の人や帰省中の人も。ほっと一息つける懐かしさが、ぎゅーっとパンにつまっています。
●砂糖がしゃりしゃり!「ホームパン」
山型食パンにマーガリンを塗って、その上に砂糖をまぶしています。トーストして味わっても。
●バターたっぷりの人気菓子パン「ミルティ」
2代目が考案した人気の菓子パン。甘い生地と中身のバターが絶妙のバランス。
●「バナナロール」はなめらかさがほかと違う!
縦切りのコッペパンに、なめらかな口当たりのバナナクリームをたっぷり。
●カロリーなんて気にしない!「バタークリームロール」
手づくりのバタークリームを、やわらかなコッペパンにはさんでいます。
●サクサクとふんわりのハーモニー「メロンパン」
昔から変わらない人気の味。表面はサクサク。中はふんわり。
●手づくりのこしあん入り「3個入りあんぱん」
手づくりのこしあんがみっちりつまっていて、食べごたえあり。
●昔懐かしいパン袋は、取っておきたくなるかわいさ
地元パンの魅力の1つが、パン袋のデザインの愛らしさ。
印刷会社の職人さんや、絵が得意な店主が手がけたものが多く、パンそのものとともに“味”があります。
●観光案内冊子で紹介され、観光客にも室井製パン所が知られるように
以前監修を手がけた、和歌山県田辺市を紹介する観光案内冊子『暮らすように旅する田辺』。田辺の隣町であるみなべ町の、室井製パン所のパンを紹介しました。
今では田辺観光に訪れる人が、スーパーで室井製パン所のパンを探して、おみやげにと買って帰るまでになっています。
●今回の地元パン
・店名:室井製パン所
・住所:和歌山県日高郡みなべ町東吉田129-1
・電話:0739-72-2344
・営業時間:8:00~18:30
・定休日:日曜日・祝日(日によっては営業)
【甲斐みのりさん】
静岡生まれのエッセイスト。大阪、京都と移り住み、現在は東京にて活動。旅、散歩、お菓子、地元パン、手みやげ、クラシックホテルや建築、雑貨などを主な題材に、書籍や雑誌に執筆。まち歩きや手みやげ講座など、カルチャースクールの講師もつとめる。著書は
『地元パン手帖』(グラフィック社刊)、
『歩いて、食べる 東京のおいしい名建築さんぽ』(エクスナレッジ)、
『全国かわいいおみやげ』(サンマーク出版)など40冊以上。ホームページ
「loule」とインスタグラム
@minori_louleで情報発信中