使う人と道具の関わりは、時間を重ねるほどに深くなっていきます。購入時はそれほど気にかけなかったのに、連れ添ううちに愛着がわくことも。新品にありがちなとげとげしさがとれて、手にしっくりきたり、見た目が部屋になじんだり。
随筆家の山本ふみこさんは、道具を選ぶときのポイントとして、実直、シンプル、へんてこ(!)を挙げます。
「へんてこというのは、まあ、おもしろみということです。どこかへんてこなところがある存在が、私は好きなんです。古顔になってきた道具たちを、修繕しながら、励まし励まされ、できる限り長くつきあっていきたいと考えています」
そんな山本さんから、家事で愛用する道具を紹介していただきました。ゆっくりとつき合っていけば、何十年と使えるものもあります。道具はもちろん、山本さんのものとの向き合い方も参考にしてみてはいかがでしょうか。きっと家事が今以上に楽しくなるはずですよ。
山本ふみこさんの実直、シンプル、へんてこな、もの選び
●白木屋傳兵衛の江戸手箒とはりみ
『ホウキがあると、気づいたときにさっと掃除ができます』
すべての画像を見る(全9枚)掃除機をいちいち出すのは面倒でも、気づいたときにさっと掃除できるのが、昔ながらの実直な道具のいいところ。はりみとは、和紙に柿渋を塗ってつくる紙製チリトリのこと。「部屋のすみにセットでホウキとつるしていますが、掃除が苦手な私でも、ちゃんと掃除してる人に見えるのもうれしいの」
※右/ほうき 不精長柄・長柄 幅20×全長80cm 左/はりみ(小穴つき)間口17×厚み6.5cm
●ベルメゾンの片面ガーゼのかるふわタオル
『薄くて吸水性が抜群のフェイスタオル』
片面がガーゼで吸水性がよいうえに、薄いからコンパクトに収納できるタオル。「本当は真っ白いタオルに憧れてますが、汚れが目立つのでアイボリーを選び、半分だけ夢をかなえています」
※34×80cm 写真のアイボリーは現在販売中止
●スコッチ・ブライトのがんこたわし
『鍋の焦げ落としがラクにできます』
焦げや汚れで真っ黒になった鍋やヤカンも、これで磨けばピカピカに。細かい部分も磨けるように半分にカットして、ペチャンコになるまで使いきります。「愛着のあるものを大事に使いたいから、タワシにもこだわります」
※7.8×12.4cm
●タマカネのブリリアント スクエアーハンガー36P
『洗濯物がずれずに真っすぐ干せて楽しいんです』
同じカラー同士のピンチではさむと、ずれずに洗濯物が水平に干せるアイデアハンガー。「最初は丈夫なプラスチック製がよくて選んだものですが、黄と黄、青と青などとやっていくのが意外と楽しくて(笑)。ピンチがからまないところもお気に入りです」
※36×66×高さ46cm
●アッシュコンセプトのTsunTsun
『水ぎれのよいシリコン製の石けん置き』
名前のとおり“つんつん”したやわらかい突起で石けんを支えるユニークさがへんてこなもの好きの山本さんのハートをキャッチ!「見た目だけでなく、水ぎれがよくてベタつかないので実用度も優秀。気持ちよく使えます」
※10.5cm角×高さ4.5cm 写真の黒は販売終了
●シェラクラブのオリジナルシェラカップ
『絶妙なサイズが使いやすい山用カップ』
「計量カップより大きくて、ボウルよりも小さいこのサイズ感が絶妙!」。もとは、趣味の山歩きの際に使っていたものをキッチンで使うように。「卵1個を溶いたり、タレをつくったりするときに便利なんです」。持ち手つきなので、パンスタンドにかけて収納
※直径12×高さ4cm 柄も含めた全長は16.5cm
●永尾駒製作所の肥後守 青紙割込(大)
『鋭さがないから安心して使えるナイフ』
昔ながらの折りたたみ式ナイフ。「よく切れるけど刃を触っても怖くなく、子どもが使っても安心」。武骨で実直なところにほれ込んで愛用し、カッター代わりとしてなんにでも活用。「これでサックもつけられないほど小さくなるまで削った鉛筆は、桐の箱へ。私の宝物のひとつです」
※全長約18cm
●無印良品のバガスペーパーカレンダー
『シンプルで書き込みやすいエコ素材のカレンダー』
「仕事の予定や家族のスケジュールを書き込み、手帳代わりに使っています」。出かけるときも持ち歩き、家ではリビングにつるして家族みんながチェックできるように保管
※14.5×20cm
●無印良品の再生紙ノート
『持ち歩けるミニサイズがよくて愛用しています』
覚え書き用に表紙が無地のA6ノートを、友人の手づくりポーチに入れて持ち歩いている山本さん。「過去の分も全部とってあって、ときどき見返すといろんな発見があるんです」
※6mm横罫 A6・B罫・30枚・糸綴じ
【山本ふみこさん】
1958年、北海道生まれ。随筆家。たわいもない日常から、人やものとのつき合い方などについて描かれた自然体のエッセイが人気。長女が独立し、夫と二女、三女との4人暮らし