コロナ禍も長く続いたりしていることから、不安な気持ちから離れられなかったり、鬱々とした気分になったりするもの…。
著名人も心身の不調をカミングアウトしていることから、誰もが自分事として考えるようになったのではないでしょうか? 今回は、深田恭子さんが公表したことで注目された「適応障害」について、うつ専門メンタルコーチで公認心理師の川本義巳さんに解説してもらいました。
深田恭子さんが診断された適応障害。うつ病との違いって?
今年の5月、深田恭子さんが「適応障害」であることを公表され、休業されました(現在は活動再開を発表)。それ以降、ネット上で「適応障害」の文字をよく見かけるようになりました。
これまでにも適応障害と公表されたり、「そうではないか」と報道されている著名人はいたので、適応障害という名前自体は「聞いたことがある」という人も多いと思います。
最近ではメンタル不調を訴える人も増えており、「適応障害」と診断される方も少なくありません。ある意味では、メジャーな病名になってきているのではないかと思います。
こうした背景から、関心が高まっている適応障害ですが、「今ひとつどういう病気なのかイメージがつかない」という話をよく聞きます。また「うつ病と何が違うの?」という質問も受けることがあります。そこで今回は「適応障害」と「うつ病」の違いをメインにお伝えしていきたいと思います。
●適応障害は環境の変化になじめず発症することが多い
まず「適応障害」ですが、その名の通り適応することに障害が生じる病気です。
よくあるのが「新しい職場に配属されたけど、雰囲気に馴染めず体調を壊してしまった」というパターン。もちろんこれ以外にも、進学や結婚、出産、介護、就職、転職、退職など人生の節目で環境が変わるときにうまく適応ができなくて、適応障害になるというのもあります。適応障害になると、心身に異常をきたします。不眠、頭痛、胃腸障害、不安、憂鬱などがありますが、これらの症状はうつ病とほぼ同じです。適応障害とうつ病が混同されやすいのはこのあたりのイメージからだと思います。
こうした心身の異常だけでなく、適応できないことへの対処方法として「引きこもり」や「不登校」になるとも考えられていますし、アルコールや薬物などの依存症の引き金にもなっていると考えられています。
次に「うつ病」ですが、これは先ほどの適応障害の心身の異常と同じような症状が起こります。基本的にうつ病と診断されるには、この症状が少なくとも2週間以上継続していることが要件とされています。
では適応障害とうつ病の違いとはなんでしょうか?
それは「
対象物があるかないか」です。適応障害は「ある適応できない環境」があって、それに対する反応のような形で現れます。そのため、その環境下にいないときは、とくに問題が起こりません。そのため「転職したら症状がおさまった」という人もいます。
一方でうつ病は「明確な対象物」が存在しません。そのため、どの環境にいても症状が続きます。「環境を変えたら」というのが必ずしもうまくいかないところがあります。
●適応障害からうつを発症するケースも…早めのケアが大切
こういう風に書くと「じゃあ適応障害はうつよりも軽くて治りやすいんですね」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。じつは適応障害を甘く見ると大変なことになります。
というのも、うつ病になった方の多くは「適応障害」からスタートしているからです。
実際、私もそうですし、私がサポートしたクライアントさんたちもほぼ全員が適応障害の状態からうつ病(または抑うつ状態)に進行しています。なので、うつ病になる前にケアをするに越したことはありません。
では、どうすれば適応障害を改善させられるのでしょうか?
ちょっと乱暴な言い方をすると、次の2つに絞られます。
(1) 環境を変える (2) 自分の物の見方、考え方を変える適応障害の場合、これまで自分がやってきた、やりやすい方法が使えなくなるということで起こります。なので、環境を変えるというのは一番即効性があります。でも環境を変えるといってもそんなにすぐに変えられる人ばかりではないですし、もしかすると次の環境もまた同じように不適応を起こすかもしれません。
そう考えた場合、私は(2)の自分の物の見方、考え方を変えるというのは効果的だと考えます。カウンセリングやコーチングといった心理療法には、こういった「認知を変える」効果がありますので、一度専門家に相談するのもいいでしょう。もちろん、心身の異常が強くて生活に支障がある場合は、医療機関を受診するようにしてください。
コロナ禍が長引く状況で、私たちの心身はこれまで経験したことがないようなストレスにさらされています。今や誰でも適応障害~うつ病になりうる可能性を持っています。
そうならないために、早めに気づいてケアできるように心がけましょう。