少しずつ日常を取り戻しつつある今日この頃。アメリカではいち早くワクチンパスポートの運用がスタートしたそうです。
そこで今回は、アメリカ・シアトルに住んで十数年。子育てに奮闘するライターのNorikoさんに、新型コロナ対策としてワクチンパスポート(ワクチン接種証明)導入が進むシアトルからのレポートしてもらいました。
アメリカ入国にワクチン接種が必要に
これまでワクチンパスポート導入に慎重だったアメリカですが、11月8日より33か国からの外国人旅行者を対象に、18歳以上は新型コロナワクチン接種完了者に限り入国制限なく渡航を許可することを発表。引き続き空路での入国には陰性証明書の提出も求められます。ただし、18歳未満については陰性証明書のみ、としています。
すべての画像を見る(全5枚)外国人の米国永住権(グリーンカード)申請にも原則、新型コロナワクチン接種完了が必要となり、いよいよ新型コロナワクチン接種義務化に向け、国内外で動き出した形です。
●アメリカのワクチン事情
シアトルは全米主要都市でいち早く、対象となる12歳以上の新型コロナワクチン接種率70パーセントを達成し、6月30日から規制が緩和され、事実上のロックダウン解除になりました。
現在は、ショッピングモールや飲食店、観光地にも人が戻り、コロナ前以上の活気を取り戻しています。ただ、シアトルのあるワシントン州内のワクチン接種ペースは鈍化しており、公務員や教職員、医療従事者、一部大企業の社員などはワクチン接種が義務づけられましたが、未接種の状況で辞職または解雇となる人はやはり一定数おり、なかなか全員へ徹底するまでには至りません。もちろん、アレルギーや基礎疾患がある方、宗教的な理由がある方などは、認められれば義務は免除されます。
●シアトルでのワクチンパスポート導入状況
6月30日より規制が緩和された頃から、シアトルとく市内では独自にワクチン接種証明の提示を入店の条件とする飲食店が増えていました。からっとして温暖なシアトルの夏は1年のうちでもとくに過ごしやすく、サマータイムで夜は9時を過ぎでもまだ明るいくらい。飲食店や観光地は稼ぎどき、というわけです。
私たち夫婦も夏は子どもを預けて、屋外席のある店へ飲みに行くことが何度かありました。大人向けにお酒を出す店だと、ワクチン接種証明の提示を求められるケースは半々の印象。一方、子どもと一緒に行くようなカジュアルなカフェやレストランなどでは、ほぼ皆無でした。
しかし、10月25日からシアトルのあるキング郡内で、飲食店ほかクラブ、スポーツジム、ミュージアムなど屋内施設の利用、大型イベントの参加に12歳以上はワクチン接種証明または72時間以内の陰性証明書が必要に。その発表後、飲食店を中心に前倒しで導入するところが一気に増えたようです。
●ワクチンパスポートの確認方法は?
キング郡でのワクチン接種の証明には、CDC(疾病対策センター)発行のワクチン記録カード、国や医療機関などの公的な接種記録、またはその写真やコピーなどが有効とされています。
先日訪れた人気のクラフトビール専門店では、店の入り口付近で係のスタッフが確認しており、スマートフォンでワクチン記録カードの写真を見せると、さらに写真付きIDの提示を求められ、運転免許証を提示しました。確認にはそれほど時間がかからず、むしろ入店してからビールを注文するための列のほうが長いくらいでした。
ただ、この店に限らず思うのは、ソーシャル・ディスタンスに慣れてしまうと、以前は全然気にならなかった隣のテーブル席が近い…(!)。
これから寒くなると雨も多いシアトルでは、屋外席やオープンエアでの食事も厳しく、だんだん屋内飲食の機会が増える季節。また、年末年始にかけてはパーティや飲み会で久々に集まる人もたくさん出てくることでしょう。ワクチンパスポート効果がどのようなものか、今後が注目されます。
そしてワシントン州全体でも、11月15日以降、コンサートやフェス、スポーツの試合など大規模イベントにおいて、12歳以上はワクチン接種証明または72時間以内の陰性証明書が必要になります。オンラインでワクチン接種を証明するツールがすでに発表されていたので、実際に州のウェブサイトへアクセスしてみました。
氏名、生年月日、電話番号またはメールアドレス、任意の4桁の数字を登録すると、その電話番号またはメールアドレスにリンクが届きます。リンクをクリックし、登録した4桁の数字を入力。すぐにQRコードとともに、ワクチン接種記録が自動的に表示されました。これは、かなりシンプルかつスピーディーですね。
●子どもへのワクチン接種もスタート
シアトル学区では、9月の新年度開始を機に対面授業が全面的に再開。マスク着用や手の消毒はもちろん、ランチは屋外で食べる、保護者含め外部の人間は建物内に入れない、学校イベントや放課後のアクティビティーはキャンセルなど、引き続き感染対策が取られています。毎週、オンラインで各校の感染状況が発表されますが、デルタ株など変異ウイルス蔓延の影響もあり、なかなか感染者数ゼロにならないのが現状です。
しかし、これまでワクチン接種対象外だった5歳から11歳までの子どもにも、従来の3分の1の量でファイザー社のワクチン接種の緊急使用許可が認められ、シアトルでも11月からワクチン接種が開始される見込みです。
すでにワクチン効果を高めるための追加接種を、高齢者や感染リスクの高い人を対象に推奨しているアメリカ。子どもへのワクチン接種を進め、さらに感染者を減らす取り組みを強化したいバイデン政権ですが、ワクチン反対派の勢いもいまだに衰えず、難しい舵取りを迫られています。
【Norikoさん】
アメリカ・シアトル在住で現地の日系タウン誌編集長。フリーランス・エディター/ライターとしても、日米のメディアに旅行情報からライフスタイル、子育て事情まで多数の記事を寄稿する。著書に『
アメリカ西海岸ママ~日本とは少し違うかもしれない、はじめての妊娠&出産~』(海外書き人クラブ刊)、共著書に『ビックリ!! 世界の小学生』(角川つばさ文庫)