●誰にでもわかりやすくADHDについてSNSで発信
そこでリトさんは、発達障害をカミングアウトして活動することを決意。Twitterのアカウントを取り、「リト@ADHD」として毎日、ADHDについて発信するようになりました。
「障害にまつわる悩みや専門書に記載された発達障害の解説を小学生でもわかるようにかみ砕いて140文字で投稿しました。発達障害の“あるある”なども含め、毎日発信していきました。多くの人が読んでくれたら、自分や発達障害についての理解も深まり、それが就職活動の助けになると思ったんです。始めてみると、同じ悩みを持っている人が多かったのか、フォロワー数はどんどん増え、気づいたときには1500人になっていました」
ところが、仕事を辞めて家にいる日々は、失敗して怒られることもない。障害の悩みを書こうにも早々にネタが尽きてしまい、早々に方向転換を迫られます。
すべての画像を見る(全5枚)「思案していたある日、たまたま、紙いっぱいにボールペンを使って絵を描きました。僕は昔から絵が得意な方ではないのですが、一度始めたらのめり込んでしまう集中力があるので、一週間かけて細かく色を塗って描き上げてTwitterにUP。すると、『素晴らしい』『これでグッズをつくってほしい』と、思ったより反響がよかったんです」
この道なら食べて行けるかもしれない!
ようやく光明を感じて、2作目、3作目と次々に描いては投稿。ボールペンで描くイラストから、真っ黒なスクラッチ面を削ってイラストを完成するスクラッチアート、粘土、切り絵などそのときに話題のアートなどを調べては次々と投稿していきました。
●プレッシャーの中、出合った「葉っぱ切り絵アート」
評判はいい。だけど、切り絵は1作品をつくるのに1週間、1か月かけても見てもらえるのは僅か数秒程度。さらに、既に切り絵で食べている人は多く、その中で新参者のリトさんが勝負して生き残るには難易度が高いのではないかと考えたそう。
「気がつけば、会社を辞めて半年。実家住まいとはいえ、僕は貯金もない。とにかく失業手当が出ている300日の間で自分が行ける仕事を見つけなければいけなかったんですよね。それがダメなら、諦めて会社員に戻るしか道はない。そんなプレッシャーの中、『切り絵 種類』で検索して出合ったのが、葉っぱ切り絵だったんです」
紆余曲折の末、今の仕事となる葉っぱ切り絵に出合ったリトさん。行き着くまでは、悩みながらも常に前を向いて行動してきました。発達障害の診断を受ける、失業手当の制度を調べる、発達障害の勉強をして発信する、そして自分の弱点となる“集中しすぎる”習性をアートに生かしてみる。
ダメと思ったら潔く次の道へと模索しながら切り替えていく。「諦めないでよかった」とほほ笑むリトさんの傍らには、葉っぱ切り絵の作品集が光っていました。
●【リト@葉っぱ切り絵さん】
葉っぱ切り絵アーティスト。Instagram(@lito_leafart)やTwitter(@lito_leafart)に毎日のように投稿する葉っぱ切り絵が注目され、国内外のメディアで紹介。また、個展で販売される作品は、即完売する人気。その作品は近著に作品集『葉っぱ切り絵コレクション いつでも君のそばにいる 小さなちいさな優しい世界』(講談社)がある。