使いやすくて、しかも、居心地がいい。そんなお手本みたいなキッチンプランをご紹介します。今回訪れたのは、集合住宅に暮らす、建築家・駒田由香さんのお宅のキッチン。メーカーでシステムキッチンの開発に携わっていた経験もあって、使いやすくて合理的なスペースになっています。キッチンプラン、動きやすさ、収納の配置など、参考にしたいアイデアがいっぱい!
すべての画像を見る(全14枚)魚焼きグリルを使いたかったので、ガスコンロは国産メーカーのものを選択。
天井までの高さを生かした食器収納スペース。壁面に凹凸が生まれないよう、扉には指が入るサイズの穴を開けて取っ手代わりに。
キッチンは家族やスタッフとのコミュニケーションが生まれる場所
21年前に自ら設計した賃貸集合住宅の一室に家族3人で暮らす駒田さん一家。大きな窓越しに明るい日差しが差し込むキッチンには、TOTOでシステムキッチンの設計に携わっていた由香さんの知識とこだわりがちりばめられています。
「当時の日本のシステムキッチンではなく、シンプルなオーダーキッチンをつくりたかったんです。シンプルだけどディティールにはこだわりましたね」と由香さん。冷蔵庫や炊飯器などの家電はキッチンには必要不可欠なものですが、主張が強く目立ってしまうものでもあります。
一般的な国産のシステムキッチンの奥行きは65㎝で冷蔵庫の奥行きは70㎝。並べたときにどうしても冷蔵庫が飛び出してしまうので、冷蔵庫を設置する側のキッチンの奥行きは冷蔵庫に合わせて70㎝に決めました。
炊飯器もオリジナルの可動ワゴンを制作してそこに収納。キッチン下に設けたオープンスペースに置いているので、使わないときはまったく視界に入りません。
また、存在感が出やすいレンジフードは埋め込み式に、壁つけしたエアコンにはルーバーをつけるなど、視界から上手に隠すことで空間に馴染む工夫が施されています。
L字のキッチンにプラスして、手前にキャスターつきの作業台を配置し、たっぷりとした作業スペースを確保しました。
「ここではもちろん料理もするんだけど、雑誌を読んだり、携帯を充電している家族がいたり。融通の効く空間があるっていいですね」
普段から事務所のスタッフを交えてここで食事をすることも多いという駒田さん。
「キッチンを介したコミュニケーションは心地よいし、人と人の関係をスムーズにしてくれます。リラックスして自然に会話が生まれる場所なのかな、と思っています」
炊飯器や土鍋などが収納できる可動ワゴン。「ご飯を炊くときだけ手前に引き出して使えるので便利です」。
すっきりとしたフォルムの水栓はデンマーク・vola社のもの。見た目の美しさはもちろん、蛇口が左右180度回転するので使い勝手も抜群。
コーナー収納の扉は可動域が広い折り戸を採用したので、調理器具の出し入れがスムーズに。
駒田さんの得意料理拝見!
左/肉じゃがは駒田家の定番メニュー。結婚当初から使っている圧力鍋でじっくり煮込んで。
右/盛りつける器を選ぶのも楽しみのひとつ。肉じゃがに合わせて、温かみのある器をセレクト。
My Favorite Kitchen Item!
weckのガラス製キャニスターは中身がひと目でわかって便利。
木工作家・吉川和人氏のウォールナット材のトレイ。どんな料理にも合わせやすくてお気に入り。
スウェーデンのダーラナホースがモチーフの鍋敷き。焦げ目は長年愛用してきた証。
駒田さんの曽祖父が営んでいた旅館で使われていた漆塗りの皿。取り皿に最適。
銅製の鍋と鉄製のスキレットはどちらも結婚当初に購入して30年以上愛用中。
駒田邸DATA
住所/東京都葛飾区
家族構成/夫(50代) 妻(50代) 子ども(10代)
専有面積/100.94㎡ (30.53坪)
竣工/2000年3月
●駒田由香さん/建築家
夫の駒田剛司氏とともに駒田建築設計事務所を2000年に設立。賃貸集合住宅「西葛西APARTMENTS」を皮切りに、集合住宅、戸建て住宅、商業施設、リノベーションなどを手掛けている。
撮影/山田耕司 ※情報は「リライフプラスvol.41」取材時のものです