マンションでは、各住戸でさまざまな人たちが暮らしています。考えたくはないですが、同じマンション内で孤独死してしばらく発見されないケース、自殺者が出る可能性はゼロではありません。今回は、そうしたことが、「心理的瑕疵(しんりてきかし=心理的に抵抗を感じること)」として、問うことができるかという問題です。あなたは、通勤にも便利で価格も手ごろなマンションを見つけ、購入しました。住み始めてから、2年前に同じフロアで自殺があったとこを知り、なんとも言えないイヤな気持ちになりました。売主や仲介業者に損害賠償や売買契約の取り消しはできるでしょうか?では、さっそく答えを解説していきます。

中古マンションの廊下
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マンションは、独立した住居の集合体心理的瑕疵には明確な定義はない。自分で調べることも大切!引渡し前に地震で破損したらキャンセルできる?知りたい人はこちらも!

マンションは、独立した住居の集合体

裁判所に訴える

同じマンション内で自殺があったことは、決して気分がいいものではありません。しかし、法律的な解釈では、自殺それ自体は、刑事法を含む公法上の違法行為と定められていません。今回の問題では、その自殺行為が、別の住戸に住む、あなたの権利利益を違法に侵害したかとう点がカギになります。

区分所有物であるマンションは、各住戸が構造上も区分されています。管理規約等で制限はありますが、法的解釈としては、戸建てと同じように、独立した住居として、居住の用に供することができるものと考えられます。

ですから、過去の判決でも「自分が住んでいる住戸以外での自殺等に事故(=心理的瑕疵)が、価値に影響するという、社会通念が確立されていると認めるにたりる証拠はない」と、損害賠償を認めていません。

ですから、答えは以下のようになります。

正解…損賠賠償や契約の取り消しができる可能性は、極めて低い

別の住戸のことなので、売主の説明義務違反を問えるかという点でも、難しいものがあります。

心理的瑕疵には明確な定義はない。自分で調べることも大切!

判決

今回の問題のように、心理的瑕疵に関わる判例は、不動産適正取引推進機構のホームページにある「RETIO判例検索システム」で見ることができます。

判決を読んで言えることは、心理的瑕疵について、明確な定義はないということです。

だれもが心理的瑕疵を感じると思われるケースでは、売買契約の解除、損害賠償が認められている判決が出ています。
しかし、購入物件で起きた火災や死亡事故でも、かなりの年数がたっていて認めなれない判決も。また事件が起きてから日が浅くても、心理的瑕疵を認めない判例が出ています。

更地にして建売住宅にする

これは2年前に自殺者が出た家を、土地つき中古住宅をして購入した業者が、建て替えて販売したケース。「嫌悪すべき心理的欠陥の対象が、もはや特定できない一空間内のものに変容している」というのが理由でした。

家や土地は大きな買い物です。告知義務の範囲外でも、買主にとっては、我慢できないこともあると思います。少しでも気になることがあったら、売主や周辺でのヒアリング、ネットでの検索をしっかり行うことをお忘れなく。

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