夫が家で仕事をしていることから、リノベーションのコンセプトは「一緒にいることと、ひとりでいることの共存」だったというUさん。約100㎡という広さのマンションの大空間を生かして、各ゾーンがゆるやかにつながりつつ、お互いの存在を気にせずに過ごせる住まいを目指しました。家の中のあちこちにデスクと椅子を置いたスペースを配置することで、夫は気分に合わせて好きな場所で仕事をすることができ、大満足だそうです。
すべての画像を見る(全15枚)ワークスペースがあちこちにある住まい
1985年築のこのマンションは、壁式構造のため大きな梁があります。その梁を逆にメリットととらえ、広い空間を視覚的に分ける役割をもたせました。
奥にあるリビングと手前のライブラリースペース、その左側にあるキッチンは、ひとつながりの空間でありながら、梁がほどよく場を分けています。
丸テーブルを置いたライブラリースペースには、床下にコンセントを設けているので、パソコンを持ち込めばここも夫のワークスペースに早変わり。
ライブラリースペースの壁一面には、天井までの高さがある本棚を配置。造作することも考えましたが、コスト重視で「マルゲリータ」のものをチョイス。「マルゲリータ」とは、建築設計事務所がデザインするオリジナル収納家具ブランドです。
その横にあるやや奥まったスペースは、以前和室の押し入れがあった場所。現在は夫の仕事机を置いて、ほどよくこもり感があって集中できるワークスペースとして活用しています。
【この住まいのデータ】
▼家族構成
夫34歳 妻32歳
▼リノベを選んだ理由
結婚を機に家探しをスタート。たくさんの引っ越し経験があり住まいへのこだわりが強い夫と、リノベ賃貸に住んでいた妻。自然と中古マンション+リノベーションという選択肢に
▼住宅の面積やコスト
専有面積/100.58㎡ 工事費/1300万円(税・設計料込み)
広さがあるから実現できた、ゆったりした書斎
「家じゅうウロウロ動き回りながら仕事をするタイプ」という夫のために、寝室内にも広めの書斎を設けました。壁は落ち着きあるグリーンで塗装。夫の母から譲り受けたライティングビューローで仕事をしたり、ソファで資料を読んだり、と大いに活用しているそうです。
寝室は元々ふたつの個室でしたが、壁を撤去して広い個室に変更しました。その寝室の中央にはクロゼットを向かい合わせに配置して廊下のように仕立て、書斎とベッドスペースをゆるやかに仕切っています。
クロゼットが緩衝地帯となっているので、夫が書斎で仕事をしていてもお互いの存在を気にせずに過ごせるといいます。ベッドスペースの壁はブルーで仕上げ、床は落ち着いたトーンのカーペットを敷きました。
コストに配慮してキッチンはあえてクローズに
あまり予算をかけられなかったというキッチンは、新たに壁を立ててクローズな空間にしました。背面にはダイニングまで続くカウンターを造作。「大容量で使い勝手がとにかくいい」と妻は大のお気に入り。
ダイニング側の梁は手前の梁とずれる形で延びていましたが、テーブルの幅に合わせて壁と天井をふかしたことで、しっくりまとまりました。壁と天井は黒に近いグレーで塗装し、空間を引き締めています。
窮屈になりがちな洗面台は廊下に移動
玄関は自転車も置けるようにタイル敷きに。宙に浮いたようなデザインの下駄箱は造作しました。
玄関から廊下にかけては床を同じタイルで統一。また、廊下の一角にはオープンタイプの洗面台を配置しました。玄関を入ってすぐの位置のため、「洗面感」を極力排除して、デザイン性を重視。
洗面台を廊下に設けることで、狭くなりがちなサニタリーをゆったりとさせることができました。脱衣所と洗面を分けた間取りは「使いやすい」と夫妻が口をそろえます。
100㎡という広い空間だからこそ実現できた、夫婦がそれぞれのペースで過ごせる住まい。緑を望める窓からは心地よい風と陽が届き、暮らしのなかに仕事がある毎日を穏やかに楽しむ、Uさん夫妻でした。
間取り(リノベーション前後)
リノベーション前
リノベーション後
プロデュース・設計/EcoDeco
中古マンションリノベのワンストップサービスのパイオニア。全コーディネーターが不動産探しから設計まで一貫して担当できるよう、不動産と設計のプロとしての知識と経験を併せ持つ。内見時には両方の視点からアドバイスができる。施工会社はコンペ形式で、公平性がある。福岡オフィスもある
撮影/飯貝拓司 ※情報は「リライフプラスvol.37」取材時のものです