近隣にマンションがあり、外に開くのが難しい立地の土地。そんななかでも、この戸建ては開放感と明るさに満ちています。その理由は、大きな吹き抜けで光を落とし込んだり、仕切りを少なくして視線を通りやすくするなどの工夫がなされているからです。家事のしやすい間取りも大きな特徴。そんな家を取材しました。

仕切りがなく視線が通る1階のLDK
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目次:

吹き抜けとトップライトで、のびやかなLDK料理や洗濯などの家事を、徹底的に時短できるプランフレキシブルな子ども部屋は、ロフト付きで楽しさ倍増間取り

吹き抜けとトップライトで、のびやかなLDK

奥に畳スペースのあるLDK

愛知県に暮らす林さんは、夫婦と小学生の子どもふたりの4人家族。夫妻は共働きのため、「とにかく家事のしやすい家」であること。また周囲を高いマンションに囲まれていたことから「視線を気にせずくつろげる家」であることを望みました。この家を設計をしたのは、悠らり建築事務所の安藤亨英と節子さん。これらの要望をかなえた方法とは…

間取りは、1階にLDKと畳スペース。2階は寝室、書斎、子ども室、洗面浴室。
これらを大きな吹き抜けでつなぎながら、光も風も導き入れるように設計されました。

写真のようにのびやかなLDKが印象的な林さんの家。中心に配されたキッチンからは1階全体を見渡すことができます。仕切りがないので、視線が通り、家族がどこにいても気配を感じられるLDKには、ゆったりとくつろげる畳コーナーも設けられました。

吹き抜けのある畳スペース

明るさのポイントは、吹き抜けとトップライトを設けたこと。吹き抜けのトップライトと、2階の大きな窓から入った光はグレーチングを通して1階に送られるからです。

吹き抜けの下には畳スペースを設けているので、くつろぎに満ちた空間になっています。また写真の左手奥には地窓が設けられており、低い位置から空気を取り込み、吹き抜けを介して2階の天窓から抜けるように設計されました。明るさだけでなく、通風にも配慮されているのです。

2階バルコニーの出入り口に設置されたグレーチング

2階バルコニーの出入り口には、側溝の蓋などに使われる格子状のグレーチングという部材を採用することで、採光と通風が得やすい設計になっているのです。

【この住まいのデータ】

▼家族構成
40代夫婦+子ども2人

▼どんな家を建てたかったか
家事がしやすく、マンションに囲まれた立地でも明るく開放感のある家

▼住宅の面積やコスト
107.28㎡(2LDK+書斎・WIC)、コストは秘密

料理や洗濯などの家事を、徹底的に時短できるプラン

昇降式物干し竿が3本ある洗面室

ともに学校の先生であるため、家事は夫婦が協力して行っているそうです。重視したのは「とにかく家事のしやすい家」であることでした。アイランドキッチンは回遊できるので調理中の動きをスムーズにし、広いキッチンカウンターはふたり同時につかっても作業がしやすい。

また洗濯を効率よく済ませられる工夫も。2階の洗面脱衣室には、3本の昇降式物干し竿が設置されています。「お風呂に入っている間に洗濯機を回し、出てから干します。基本は室内干し。吹き抜けを通って風が抜けるので、洗濯物もよく乾きます」と妻。壁は調湿作用のある漆喰塗料で塗られているのもポイントです。

洗濯機と洗面台

洗面脱衣室は寝室や子ども部屋とつながっているので、洗濯物をしまうのもスムーズです。「夫は、1階で使うタオルなどは吹き抜けからポンポン下に落として、リビングで畳むんですよ(笑)」(妻)

衣類をかけておける収納スペース

LDKの入り口には衣類をかけておける収納スペースを設けました。「明日も着る上着や毎日使うカバンなど、2階まで持っていきたくないものはここに置けるので便利ですね」(妻)

手洗い場とハンガーパイプを設置した玄関

玄関にはハンガーパイプと手洗いカウンターを設置しています。出掛ける前の身支度と帰宅後の手洗いが断然ラクに。カウンター下の空きスペースには、外遊び用の道具などをカゴに入れて収納。

玄関のステンドグラス

玄関のアクセントになっているのがこちらのステンドグラス。ミツヤアーキテクチュアルグラススタジオにオーダーしたもの。立体的なプリズムガラスを取り入れることで、時間帯によって虹のような光が差し込んで美しいそうです。

フレキシブルな子ども部屋は、ロフト付きで楽しさ倍増

多目的に活用している2階の子ども部屋

2階にある子ども部屋は現在一室空間。必要に応じて仕切れるようになっています。今は広々としたプレイルームなので、ここにテントを置いたりバランスボールを楽しんだり、夫の書斎にもなったりと、多目的に活用。トップライトから光が降り注ぐ、明るくてのびやかな空間です。

子ども部屋にあるロフト

高い天井を生かしてロフトを設けていますが、下を低めに設置したのがポイント。「ロフトを有効に使えるように、下部の高さを抑えてロフトに上がりやすくしてもらいました」(夫)。ロフトは左右対称につくられていますが、部屋を2室に仕切るための梁も設けられています。

今はここに布団を敷いて、家族みんなで寝ているそうですよ。

ルバリウム鋼板を採用した外観

外観は黒のガルバリウム鋼板を採用し、南側は窓を最小限に。東側の大きな窓には木製ルーバーを取り付けて、近隣のマンションからの視線をカットしています。また、このルーバーのおかげで室内には屋外の風を取り込むことができます。

毎日を忙しく過ごす林さん夫妻ですが、家事を効率よくこなし、限られた時間でも子どもたちとの時間を楽しむことができる理想の住まいを手に入れたようです。

間取り

間取り図

設計/悠らり建築事務所設計(安藤亨英・安藤 節子)
(安藤亨英)1973年愛知県生まれ。大同工業大学建築学科卒業。名古屋市の設計事務所を経て、2007年に悠らり建築事務を設立。(安藤節子)1972年愛知県生まれ。江南女子短期大学インテリアデザインコース卒業。住宅設計、店舗設計の会社を経て、2007年に亨英とともに悠らり建築事務を設立
撮影/日紫喜政彦