各々が思い思いに過ごせるリビングやライブラリースペース、音楽室など、家族共有の場所が散りばめられた4人暮らしの家。Kさんと3人の子どもたちが暮らすこの家は、みんなが自然に集まるリビングをはじめ、どこにいても家族の気配が感じられます。また仕事を持つ母親であるKさんの家事を助ける動線計画も、この家の大きな特徴。毎日の洗濯や調理がストレスフリーで効率的にこなせる、そんな住まいを拝見してきました。
すべての画像を見る(全16枚)家族が思い思いに過ごす、外とつながるLDK
埼玉県に建つこの家に暮らすのは、Kさんと3人の子どもたち。
「あまり広くはないので、ソファなどは置きません。でも私たち家族にとって必要十分なサイズのリビングなんです」(Kさん)
こちらがそのリビング。キッチン、ダイニングから連続する横長の窓から光が入る、気持ちのいい空間です。子どもたちはビーズソファを好きな場所に置き、思い思いに過ごします。「あまり広くはないので、ソファなどは置きません。でも私たち家族にとって必要十分なサイズのリビングなんです」(Kさん)
リビングには庭へと続くテラスをつくりました。ここもリビングの延長として使える空間です。
「テラスは軒を深くして腰壁で囲うことで、周囲の視線を気にせずくつろげるアウトドアリビングにしました」と話すのは、この家を設計したストレートデザインラボラトリーの東端桐子さん。Kさんは、庭を眺めながらテラスでお茶を飲む、そんなちょっとした時間が楽しみなのだとか。
キッチンはシンプルな壁付け型。オリジナルのステンレスキッチンです。
オープンな収納、こだわりの海外製コンロやオーブン、食洗器などを設置し、シンクの前には大きな出窓を設けています。出窓のおかげで、気持ちよく風が通り、外の景色も楽しめます。ダイニングからは見えない位置にはパントリーと勝手口を設けているので、作業動線も抜群。Kさんが思い描いた理想のキッチンになりました。
また内装の仕上げは、「Kさんが好きなレトロ感あふれる家具に馴染むように、床はパーケットフローリングにしました」(東端さん)。以前から愛用していたヴィンテージのダイニングテーブルやキッチンに取り付けたチューブランプなどのデザインをヒントに、素材や色などを決めたそうです。キッチンのざっくりとした質感が、LD空間にも自然に溶け込んでいます。
ダイニング脇にある濃紺のスチールと木製の踏み板で構成された階段。踊り場の窓とひとつながりになった2階からの光が入る、明るく抜け感のある階段室です。
階段下のデッドスペースは収納に。アイロンなどの日常家電やティッシュなどの備蓄用品を収めています。
【この住まいのデータ】
▼家族構成
本人40代+子ども3人
▼家を建てた理由
以前住んでいた家も建築家に設計を依頼したが、生活や価値観が変化し、今の自分らしく暮らせる家が欲しいと思ったから。
▼住宅の面積やコスト
112.76㎡(5LDK)、コストは秘密
毎日、大量の洗濯物! 洗濯のストレスを軽減する間取り
中学生2人と小学生の、育ちざかりの子どもたちが3人。当然、洗濯物も毎日大量に出されることになります。そのためKさんは、洗濯関連の家事動線をコンパクトにしたいと希望していました。東端さんは、ウォークインクロゼットから洗面室、浴室と一直線につながるプランを提案。シンプルな動線で、洗濯、乾燥、衣類収納までが1か所で完結します。
運動部に所属している子どもたちのユニフォームは、泥で真っ黒に汚れてくることもあります。
洗濯機は「泥汚れにはマスト」と、あえての二層式です。ガス乾燥機を上部につけて、常にストレスフリーで大量の洗濯ができるように整えました。
ここでは家事効率だけでなく、洗面室のデザインにもこだわりました。壁面に淡いブルーのタイルを貼り、フィリップ・スタルクのデザインによる洗面ボウルを組み合わせています。
浴室は「壁のレトロなバナナ色タイルがいいでしょ(笑)」とKさんお気に入り。
個室が並んだ2階にも家族の共有スペースを
2階は子ども部屋3室とKさんの寝室を配していますが、廊下に家族で共有できるライブラリースペースを設けました。本棚は窓の上に設置。南に向けて横長の窓を設けているので明るく開放感があり、ゆっくりと外の景色を楽しむこともできます。
Kさんの個室は和室。「畳のい草の香りが好きなんです。夏は布団を敷かずにじかに横になると、疲れもストレスも吹き飛びます」。
玄関脇の音楽室も家族で使っています。しっかり防音対策をして、夜でも気兼ねなく使えるように配慮しました。
広めにとられた東向きの玄関には、縦長のスリット窓から朝の光が注ぎます。
建物は上下階とも、横長に連続する窓が特徴的。落ち着いたグレーの吹き付け仕上げとフレキシブルボードの外壁に、木製のテラスを合わせました。周囲の景観にも馴染むやわらかな雰囲気が漂っています。
ゆったりとした敷地には2台分の駐車スペースと広い庭も。こちらは庭師の手を入れて、1年を通して様々な草花が楽しめるようにしているそうです。仕事や家事の合間にする庭の手入れも、Kさんの癒やしになっているそう。
家族を包み込んでくれるこの家では、家族が仲よく、おおらかに暮らしていることが伝わってきました。
設計/ストレートデザインラボラトリー・東端桐子1971年京都生まれ。京都工芸繊維大学工芸学部造形工学科卒業。篠原一男アトリエ、難波和彦+界工作舎勤務ののち、2003年にストレートデザインラボラトリー設立撮影/松井 進