家づくりのために土地を購入する際は、不動産業者などから事前に情報収集をして、隣人トラブルはできるだけ避けたいものです。しかしときには、それがうまくいかないことも。もしも、購入した土地の隣人がクレーマーだったら、家づくりの過程でどんな問題が起こるのでしょうか?まさにこの悲劇を体験してしまったという人に、話を聞きました。

目次:

まさか、隣家に強烈なクレーマーがいたとは莫大な経費と引き換えに気兼ねなく暮らせる新天地へ!運がなかったのか、情報収集が足りなかったのか

まさか、隣家に強烈なクレーマーがいたとは

Mさん家族にクレームを入れる隣人
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悲劇の物語の主人公は、Mさん一家です。敷地16坪、3DKの3階建ての建売住宅に住んでいたMさんは、夫婦と子ども2人の4人家族。3階建て住宅での生活は動線がハードモードなうえ、子どもが成長するにつれ家も手狭に。そこで「子どもの学区内で注文住宅を建てよう」と決心しました。

学区内には手頃な土地はなかったものの、隣の学区に条件に見合う古家付きの土地を購入。
今まで住んでいた家もすんなり売却でき、あとは家を建てるだけのはずが、クレーマーの出現で計画は二転三転することになります。

近隣住民にも挨拶してから土地を購入したのに

購入したのは、敷地33坪の古家付きの土地。住環境もよく、近くにはママ友たちも住んでいてなにかと心強い。
「設計を依頼した友人の建築士には、土地探しの段階から付き合ってもらっていたので、様々な面で安心でした」とMさん。

購入前には何度も足を運び、近隣にも挨拶。住民の様子も確認していたそうです。
「そのときには、60代後半と思しき隣人夫妻とも話をしていて、普通の方だと思っていたのですが」
しかし購入後に事態は一変します。

ある日、古家の解体で外壁に小さな傷が付いたと連絡が入って

古家を取り壊し、更地にしていた時のこと。
隣家からの電話で「お宅の工事で、うちの外壁に傷がついた」というのです。
古家はシートで覆って工事しているのでその場所に傷が付くとは考えにくく、Mさんと建築士が駆け付けたものの、傷を付けた付けないの水掛け論に。
最終的には業者が傷を補修しましたが、そのあとは設計にまでクレームをつけるようになってきたそうです。
曰く「自分の家の側から子ども部屋を遠ざけろ、換気扇、エアコン室外機はこちらを向けて設置するな、半地下を掘ると地下水脈が変わる、町会で住民説明会を開け、工事車両は何トン車までにしろ」等々。

結局、クレームに負けて町会で住民説明会まで開く羽目に。当然、設計も進まず、その1年は土地が塩漬け状態。

「そんな状況でも、銀行からは建築計画の提出を催促されるし、仮住まいの家賃や土地のローン返済などで予算はどんどん目減りしていき、この先どうなることかと思いました」

購入した土地の近隣住民から入った1本の匿名電話がきっかけに

匿名の電話がかかる

Gearstd/PIXTA(ピクスタ) 写真はイメージですある日Mさんに1本の電話がかかってきました。話の内容は、「あなたたちのような若い人が引っ越してくるのは歓迎するけれど、隣人には気をつけて」というもの。聞けば近隣の方たちも、件の隣人からかなりのクレームを受けていたそう。しかし弁が立ち、町会役員もしている隣人には誰も文句が言えない状態とのことでした。

「それを聞いて、住み始めたあと子どもへの影響を考えると、暗澹たる気持ちになりましたね」

莫大な経費と引き換えに気兼ねなく暮らせる新天地へ!

Mさん家族が困っている様子

Mさん夫婦は共働きということも、一層の不安を募らせる原因に。「親がいないとき、子どもたちが騒いだりしたら何を言われるか。子どもに窮屈な暮らしをさせるのでは、何のための家づくりかわかりませんよね」結果、Mさんはその土地を手放すことを決心。新しい買主には隣家の件も伝えたうえで、購入時と同価格で売却。自分たちは、2駅離れた場所に新築の建売住宅を購入しました。

幸い手放した土地よりも少し広く、隣地が大きな造園畑だったことと、近隣の人たちが「若い人が住んでくれてうれしい」とフレンドリーだったのが救いだったといいます。

運がなかったのか、情報収集が足りなかったのか

「2年余りの間にかかった経費は考えたくもない」とMさん。
購入費用に加え、仲介手数料や仮越し費用、解体費や地盤調査費、それに設計料の一部など、経費は相当な額に。
新しい家の住宅ローンは約7万円上がり、ローンの返済期間は延びてしまいました。
「教育費がかかる時期は特にきつくて。トホホな気持ちって、こういうことなんですね」

Mさんの場合は、よくよく調べて買ったつもりだったのに残念な結果に。
条件に合う土地は買えても、人間関係までは買えません。
土地購入の際には、隣家だけでなく近くに住む様々な人にも話を聞き、もっと周到な情報収集をした方がよかったのかもしれませんね。

イラスト/藤田マサトシ
※情報は「住まいの設計2020年6月号」取材時のものです。