様々なジャンルで活躍する方をゲストに迎えて、“すまい”にまつわるお話を伺うこのシリーズ。それぞれのライフスタイルの中で、「家に求めるもの」や「大切にしているもの」を深掘りしていきます。第8回目は、独特のスピリチュアルな視点で世の中を切り取る作風が人気のコラムニストで漫画家の辛酸なめ子さんが登場。辛酸さんが考える、理想の住まいとは?
26歳で実家から独立して中古マンションを購入!
すべての画像を見る(全5枚)「学生の頃は7畳ほどの部屋を2段ベッドで仕切って、妹と2人で使っていました。
妹が寝ると消灯しなければならないので、本を読むこともできず、暗闇の中で手探りで生活していました(苦笑)。
そんなこともあって、早く自立したいと思っていましたね」
このように実家に住んでいた時代を振り返る辛酸さんは、26歳で実家を出て、中古マンションを購入。「自立」したという。
若くして中古マンションを購入した彼女だが、賃貸マンションに住まなかったのは彼女らしい理由があったようです。
「実家は埼玉県内を転々として、飯能の借家に住んだこともあり、崖とお稲荷さんに挟まれ、マムシが出たりしました。
それが原因で一軒家が苦手になっちゃって、ひとり暮らしするならマンションがいいなと決めていました。
それで荒川区の手頃な中古マンションを買ったんですが、賃貸だと月々の家賃で生活が立ち行かなくなりそうだし、それなら家賃よりも安い月4万~5万円でローンを組んだほうがいいと思ったんです」
しかし、最初に購入した中古マンションはあまりいい物件じゃなかったという。
「内見すると、部屋じゅうにやたらとお札が貼ってあって……。
不動産屋さんは『前のオーナーがギャンブル好きで、ゲン担ぎのためですよ』と説得力のないことを言うだけだし(苦笑)。
おまけに最寄り駅まで徒歩で20分もかかり、雪の日に行き倒れかけたり……。
日当たりが悪く、原因不明の眠気に襲われることがたびたびあって、仕事にならない。それで厄年を機に心機一転、引っ越すことに決めました」
辛酸さんが東京の下町に住み続ける理由とは?
その後、台東区の新築マンションを購入した辛酸さんは、今も快適に暮らしているとか。
しかし、なぜ下町にばかりに住んでいるのか? 何かこだわりがあるのですか?
「荒川、台東と下町に住んでいるのは、埼玉出身者がいきなり港区に住むのはハードルが高いし(苦笑)、都内で住みやすそうなエリアを選んだ結果です。
ただ、マンションを買うとなると、自由業の私には会社員のような信用はなく、何度も不動産屋さんに通って、買いたい本気度をアピールしました(笑)。2LDKと前のマンションより広いし、謎の眠気に襲われることもなく(笑)、仕事がはかどります」
難があるとすれば、日当たりがよくないことくらいと話す辛酸さん。
でも、意外な方法で対処しているという。
「都内のマンションは隣も高い建物で、日があまり入らないので、北欧家具を置いてます。
北欧って日照時間が少ないぶん、家の中を明るく、居心地をよくする工夫が上手で、国自体も幸福度が高いですよね。デンマーク発の雑貨店・フライング タイガーも、商品の色や形がポップで、お店に行くだけで気分が明るくなるくらい。私にとって家は、自分を浄化したり、英気を養う場所。
だから、北欧家具のほかにも、空間を浄化するスプレーを使ったり、パワーストーンを置き、小さな神棚もしつらえてます。
それに、お祭りや神社巡りをしたときにもらってきたお札も置いてあります」
スタルクは、アサヒビールの“筋斗雲”のような巨大オブジェが有名だが、家具にも造形美が見て取れる。
趣味で集めたパワーストーンにはシバリンガムなど、さまざまな石がある。
ハンドスピナーの穴とちょうど同じサイズのものもあったので、ハメてみましたんだとか。
一軒家恐怖症だけに、やはりマンション?辛酸さんが住みたい家とは…
そんな辛酸さんの望みがもしかなうなら、どんな家に住みたいですか?
「昔のお屋敷のような庭園のある家。六義園や旧岩崎邸庭園など、昔のお屋敷を見にいくのが好きなんです。
お屋敷は造りが贅沢ですし、手入れのいい庭園もあるから、とても気持ちがいいです。
旧吉田茂邸は大磯の高台にあって、富士山がよく見えるうえにオーシャンビュー!
ここに住めば総理になるのも当然と思うほど、運気がよさそうでした。
それに、マンション暮らしで草木の緑が足りないので、庭に憧れがある。一軒家は苦手だけど、こんな家なら別荘として住んでみたいですね」