新型コロナに生活や気持ちが振り回された2020年。最近、なんとなく疲れがたまっていませんか? 疲労やストレスなどで免疫力が落ちたときに気をつけたいのが「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」。
赤みのある小さな水膨れが帯状に現れピリピリと刺すような痛みが特徴の病気で、芸能人や著名人でもかかったというニュースもあり、病名を聞いたことがある人も多いと思います。
ここ数年発症する人が増えているという「帯状疱疹」の特徴や予防法について、よしき皮膚科クリニック銀座・院長の吉木伸子先生に教えていただきました。
女性の方が男性よりも1.3倍の発症率!「帯状疱疹」はどんな病気?
すべての画像を見る(全4枚)「帯状疱疹」は40代、50代以上から急増し、80歳までに約3人に1人が罹患するといわれています。そして、女性のほうが1.3倍ほど多く発症するそうです。この「帯状疱疹」とはどのような病気なのでしょうか?
「帯状疱疹の原因は、水痘(水ぼうそう)とウイルスの再感染です。多くの方は、子どもの頃にかかった水ぼうそうにかかったことがあると思います。じつは水ぼうそうが治ったあとも、水痘ウイルスが脊髄から出る神経節の中に生き残っていて、疲れやストレス、加齢などで免疫が低下したときに再び活性化します。神経に沿って帯状に水泡ができるので、帯状疱疹と呼ばれます」
●帯状疱疹になりやすい時期は?家族にも感染するの?
帯状疱疹が流行しやすいシーズンなどは、あるのでしょうか?
「以前は夏になりやすい、など言われていましたが、帯状疱疹は季節性の病気ではなく、免疫力の低下がいちばんの要因です。ストレスを感じやすい人は仕事で多忙を極めたあとや、家事の負担が増える連休や年末年始など疲れをためやすい時期などに、急に疱疹ができるケースも多くみられます」
長引くコロナ疲れや、年末年始の準備で忙しい人は、今まさに疲れが出やすい時期。もし急に疱疹が出てきたら、注意が必要です。
また水疱瘡は空気感染でうつりやすいと言われますが、帯状疱疹はどうなのでしょうか?
「帯状疱疹は水痘ウイルスの再感染ですが、人に感染する病気ではありません。家庭内感染の心配はなく、疲れることをしなければ、普通に過ごして大丈夫です。もし帯状疱疹を発症したとしても、まれに何度もかかる人もいますが、たいていの人は一生に1回の病気です」
●疱疹ができて「おかしいな?」と思ったら、自己判断せずにすぐに皮膚科へ!
では一般的な疱疹(単純ヘルペス)と帯状疱疹は、どんな点が違うのでしょうか?
「帯状疱疹は神経に沿って帯状に水疱が広範囲に、体の左右どちらかに発症します。部位はどこにでも発症しますが、とくに胸や背中に多く、深く強い痛みを伴います。
単純ヘルペスは口唇部や陰部に多く、同じ部位に数か月おきに出ることが多い、という特徴がありますが、そのどちらも満たさない場合があり、実際には皮膚科医でも見分けがつかない場合があります。その場合は血液検査をします。
そのほか、水疱ができる疾患として虫刺され、接触性皮膚炎(かぶれ)、膿痂疹などありますが、それも、医師でも区別がつかない場合もあります。そのため、帯状疱疹を疑ったらまずは皮膚科を受診した方がよいと思います」
●「帯状疱疹」の治療は抗ウイルス薬。受診が遅れると神経痛が残るケースも
疲れやストレスなど免疫低下が引き金になる「帯状疱疹」ですが、もしなってしまったときの治療法は?
「治療は抗ウイルス薬で水痘ウイルスの増殖を押さえます。発症してから2~5日以内に開始しないと効果が下がるので、早めの受診がとにかく大切です。疲れることをしなければ、生活は普通に送れます。
受診が遅れると、神経痛が長期間残るケースが多くみられます。高齢になるほど神経痛を発症するリスクが高くなり、鎮痛薬が効かないことも多く、特殊な薬を処方しても痛みが完全に取り切れないときもあります。
顔面に帯状疱疹が出た場合は、神経の流れに沿って障害を及ぼすことから、顔面神経麻痺や聴覚障害、目の角膜炎などの合併症に注意が必要です。顔に疱疹の傷が残ることもあります」
●「帯状疱疹」のいちばんの予防法はワクチン接種。50代以上が対象に。
知れば知るほどかからないようにしたい! と思う帯状疱疹ですが、2016年より50歳以上の方を対象に帯状疱疹のワクチンが認可されました。
「ワクチン接種をすることで帯状疱疹の発症率が低くなり、もし発症しても重い後遺症が残ることを防ぐ効果があります。
50歳以上の方や膠原(こうげん)病など免疫が低下する疾患がある方は、ワクチン接種を検討してみてもよいと思います。一回で効果は10~15年持続します。帯状疱疹のワクチンはとても安全性が高く、アメリカでは接種が義務付けられているほどです」
予防接種は健康保険が適用されないため、自己負担(¥5000~1万円程度)になります。(※かかりつけの医師に相談のうえ、接種をご検討ください。)
予防接種のほかに、免疫力の低下を防ぐために食事や睡眠をしっかりとり、適度な運動をするなど日頃の体調管理が大切です。疲れのサインを見逃さないように気をつけましょう。