頑固な便秘や、急な下痢、さらには便秘と下痢を交互に繰り返す……。続くお腹の不調にひそかに悩んではいませんか? 芸人やアスリートといった有名人も同様の症状をカミングアウトし、注目されています。
繰り返すお通じや排便トラブルは、じつは「過敏性腸症候群」と呼ばれる病気の可能性も考えられます。辻仲病院柏の葉の臓器脱センター医長であり、排便機能障害・便秘外来を担う前田孝文先生にうかがいました。
お腹の不快感、排便トラブルは過敏性腸症候群かも?その原因と改善法とは
とくに思い当たるふしがないのにお腹を下したり、便秘が続いたり、便秘と下痢を交互に繰り返したり。お腹や排便の不快感は日常生活にも影響を及ぼしかねません。症状に改善が見られないと心配になります。
●なんだかお腹の調子が悪いのはなぜ?痛みをともなうなら過敏性腸症候群の可能性が
「下痢や便秘が続いたり、下痢と便秘を何度も繰り返したりする方の中で、お腹の痛みが起こる場合は過敏性腸症候群(IBS)の可能性があります。便秘や下痢にともなって腹痛や不快感があり、便を出すとスッキリし、症状が和らぐのが特徴です。下痢型と便秘型、下痢と便秘の症状が代わる代わる現れるタイプが見られ、どのタイプも腹痛がともない、排便することで症状が軽快するのが特徴となっています」と前田先生。
「とくに腸に異常があるわけではなく、その『働き』によるもの、機能的な問題が原因のひとつとされています」
●腸内には体のエネルギーとなる酸を作る善玉菌、悪さをする悪玉菌、それ以外の日和見菌が存在
腸そのものに異常がないのに不快な症状が改善しないのは辛いもの。どうやら腸の働きに症状改善のヒントがありそうです。
「私たちの大腸の中には、1000種類以上、100兆個もの腸内細菌が住んでいると考えられています。いわゆる、腸内フローラですね。この腸内細菌は善玉菌と悪玉菌、そのどちらでもない日和見菌の3グループに分けられます。ネーミングからもわかるように、善玉菌は人間の体においていい働きをする菌、逆に悪玉菌は悪い働きをする菌です。
善玉菌は乳酸や酢酸などといった酸をつくり、腸内を酸性に保ちます。腸を酸性に保つことで腸の動きを活発化し、悪玉菌の増殖を抑える働きをするほか、病原菌から体を守り、免疫力を高める効果を持つことがわかっています。一方の悪玉菌は、炎症性腸疾患を起こす原因になり得るとされ、悪玉菌が増え、腸内のバランスが乱れると過敏性腸症候群の症状が起きやすくなるのです」
●便秘型の症状に悩んでいるなら、水溶性食物繊維をゴボウ・ラッキョウを積極的に摂ろう
前田先生は、腸内環境を整えるためにも、まずは食事に気をつけていくことの大切さを強調します。
「お通じのトラブルに限らず、健康にはバランスの摂れた食事が欠かせません。特に野菜に含まれる食物繊維を摂取するよう心がけましょう。水溶性食物繊維が多く含まれるゴボウはおすすめです。食物繊維には水に溶ける性質の水溶性食物繊維と水に溶けにくい不溶性食物繊維があります。水溶性食物繊維は水分を保持し、便を柔らかくしてくれるので便秘への効果が期待できます」
ゴボウはこの両方の食物繊維がバランスよく含まれていますし、きんぴらゴボウや甘辛煮、おみそ汁など、レシピも多彩で摂取しやすいのも◎。
「また、ラッキョウも水溶性食物繊維が豊富に含まれる食材で、その含有量は食品中トップクラス。甘酢づけがポピュラーですが、どうしても甘酢の部分に食物繊維が溶け出してしまうのがネックです。ですから、ラッキョウと一緒に甘酢も召し上がるといいでしょう」
毎日の食事に食物繊維の多い野菜をプラスするのは、そう難しくないはずです。食事に気を配り、少しずつ腸内環境を整えるよう努めましょう。
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