グラフィックデザイナーの西出弥加さんと夫の光さん、夫婦ともに発達障害という特性をもちながら、結婚。そして結婚から約1年たった現在、別々に暮らしています。
ADHDの夫・光さんはもともと掃除が苦手でしたが、現在はすっきり片づけをしながら一人暮らしをしています。そこまで変化できたコツを妻・弥加さんがつづってきれました。

西出さん夫妻
西出さん夫妻。手前右が弥加さん、左が光さん
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掃除が苦手だった発達障害の夫が、毎日きれいをキープできているコツ

私はASD、夫はADHDの特性をもっています。お互いの仕事を続けるため300km離れた場所で別居中です。私はリモートで毎日、夫が家事や仕事をスムーズにできるよう指示をしています。
なぜ私の指示が必要なのかというと、ADHDの特性をもつ夫は日常生活におけるヌケやもの忘れが多く、そもそもの掃除が苦手だったからです。

今では、自分が住む部屋を毎日きれいをキープし、“自分にとって居心地のいい”部屋で過ごすことができています。今回は、そんな夫が実践したことを紹介します。

●完璧を目指さず“自分が”居心地いいと思える空間をつくる

まず掃除と聞くと書籍や番組で発信されている、ホテルのように片づけられた部屋、収納上手な部屋が頭に浮かびますが、そのイメージは一旦、無視します。自分が居心地がいいと思えれば、それは掃除できているということです。自分が不快、ストレスと感じる部分をとにかく排除できればOKだと決めました。

結論から言うと、夫にぴったりはまっていた空間は、「ものを減らすこと」でした。
ものを減らすと、やるべきことも減り、脳のワーキングメモリもパンクしません。つまり、本人にとってものが少ないことがストレスがないのです。ここが明確になることで、心地いい空間をキープできたということです。

●床においていいものを限定する

部屋

夫の部屋はこのようにものが少なく、片づけやすい空間をキープしています。

そのためのルールは、「床にものを置かない」こと。この部屋で床に接しているのは、ベッド、デスク、棚、イス、飾り棚だけです。

以前の夫はとりあえず床にものを置いていたため、踏んで壊すということが嫌だったようなので、ここはしっかりとルールにすることにしました。

ものを少なくすることで部屋がすっきりしてきて掃除の回数が減ります。掃除が苦手だったり、おっくうなときは「掃除をしなくてはいけない」と思うより「掃除の回数を減らそう!」という意識にしておくとプレッシャーがなくなります。

床にものを置かないルールなので、ものは机か棚かベッドの上に置くことになります。もし、その場所が散らかってきたら「今日は1か所だけ片づけける」と決めて掃除をします。ストレスになるとよくないので、完璧な状態とは比べず、自分が居心地悪いと思ったら初めて手をつけるくらいが、持続できるポイントです。

●お皿は一人4枚までにして、洗い物を増やさないようにする

食器

お皿も基本は1人4つまでと決め、洗い物を増やさないようにします。

夫の家には私の分も入れて、8枚の食器があります。

献立はワンプレート料理にして、洗い物を1つだけにする日もあります。夫にとっては、とにかくやることを減らしていくことが、抜けと忘れが出ない方法でした。

●掃除は基本、コロコロする"だけ"

床をコロコロ

日々の掃除は自分のいる場所をコロコロで掃除するだけです。

部屋全体を掃除しようと頑張らず、自分がいた場所だけ少し掃除する。毎日1分でもいいのでやってみる、ということを心がけてもらいました。

コロコロをするだけでも、自分のいる場所はある程度きれいになるので、大掃除の回数が減ります。目に見えるところだけでもやるようにして、日々、自分を甘やかします。少しずつやることで、「掃除をしなければいけない」というストレスがなくなります。

なぜ、コロコロなのかというと、終わったらはがして捨てるだけだから。掃除機やぞうきんと違い、フィルター掃除や水もつかうこともなく、シンプルだからです。

夫は、コロコロを毎日続けて、常にきれいをキープしています。

●1年使ってないものは処分する

生活していると、自然とものが増えてきますが、1年以上使っていないものは捨てることもルールにしています。

捨てるのはもったいない、でも売ることがめんどうなときは、フリマアプリで売ることが好きな人に頼んで売ってもらうようにしています。
好きなことではない行動はつい避けてしまいがちなので、いつか売るかもと思い放置することは目に見えています。だったら最初から人に頼んで、すぐに部屋から処分してしまえばいいのです。

友人でも家族でも頼めそうな人でOKです。ちなみに夫のいらないものは、梱包や発送が趣味な私が代わりに楽しく売りました。得意じゃないことはすべて自分でやらなくてもいいのです。
もし売ることが好きな人が周りにだれもいない場合は、潔く捨ててしまうのがいいのではないでしょうか。

●掃除が得意な人に一度すべての工程を教わる

一方、私は掃除や整理収納が大好きでこだわりがある方です。掃除が苦手な人はそもそも掃除の仕方がわからないことも多いので、最初は夫に教えました。

部屋全体をどのようにきれいにしているのか、実際に見てもらうことがもっとも学習になりますし、自分のなかでひとつの基準ができます。

完成形が分からないとどこから手をつけたらいいのか分からないということもあるので、一度モデルの手順を見てみることで、その中で自分ができること、できないこと、しないことを決めるとラクになり、自分に合った方法が見つかりやすいからです。

掃除道具

掃除道具もどんなものを使っているのか見てもらい、必要そうなら自分の頭で考えて取り入れる。この自主性が大切なことだと思います。

●苦手なことはどんどん減らしていこう

掃除が苦手な夫はこのように「やるべきこと」を減らしたおかげで、きれいをキープできています。毎日続けなければいけない暮らしのことは、なるべくミニマルにしていくというのが得策でした。

できることが続いていくと、どんどん好きなものを取り入れる余裕も出てくるので、成長になります。もしも、苦手な家事があれば、なるべくシンプル化していくことが抜けもなく、心の健康にもいいのではないでしょうか。

【西出弥加さん】

絵本作家、グラフィックデザイナー。1歳のときから色鉛筆で絵を描き始める。20歳のとき、mixiに投稿したイラストがきっかけで絵本やイラストの仕事を始める。Twitterは

@frenchbeansaya