夫婦のどちらもが退職すると、暮らしのサイズにあわせて身の回りに置くものを見直したり、年金などの収入でこれまでよりコンパクトにやりくりしたりする必要があります。この世代に必要なものや、お金の扱い方はどのような姿が理想的なのでしょうか。

「ものとのつき合い方」については、日本人のライフスタイルを研究する辰巳渚さんに、「お金とのつき合い方」については、ファイナンシャルプランナーの横山光昭さんに教えてもらいました。

ものが減ってスリムな暮らしに
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ものを減らしてスリムな暮らしを

退職後は自分の目がしっかり届く範囲で「もの」「お金」とつき合う!

【ものとのつき合い方】 今後のことを考え、ものの取捨選択を。体に負担のかからない暮らしを意識して

退職後は老いを意識し、ものを手放していく時期。体力の衰えとともに、一般的には、アクティブに活動する時間や地理的領域も減るので、自身に必要なものも絞られてきます。

「退職によって不要になった仕事道具の処分は夫に判断を委ねましょう。一方、新しく始めた趣味のものや身内の形見など増えるものもあるので、収納スペースには余裕を持たせるように。体力の変化に伴ってケガにつながりそうなものは早めに処分を」

暮らしのスリム化は、元気なうちに手をつけておくことが大切。整理すべきものをためたままにしておくと、年齢を重ねるほどおっくうになるものです。また、相手のものを勝手に、あるいは無理に処分しないように肝に銘じておきましょう。ものへの思い入れは人それぞれ。パートナーの気持ちを尊重することをお忘れなく。

・退職後に増えるもの

趣味のもの、親・親せきのもの(遺品、介護用アイテムなど)、孫のものなど

・退職後に減らしたいもの

危険性のあるものは処分を検討
危険性のあるものは処分を検討

仕事道具、危険を及ぼす可能性のあるもの(ヒールの高い靴、石油ストーブ、天ぷら鍋など)
年を重ねても「まだ自分は大丈夫」と思いがちですが、新しい生活を始めるためとフレッシュに考えて、前向きに手放してみましょう。

【お金とのつき合い方】
貯められる時期は基本的に終わり。退職金と年金でスリムに暮らす

退職金が入りますが、「退職以降の収入は基本的に年金のみで、貯蓄をきり崩していく時期です。このなかから住宅ローンの残りや医療費、介護費用も用意する必要があります」。旅行やイベントなどの大きい出費はほどほどに。小さい出費の範囲で、日常を豊かにしてくれるものや、生活にうるおいを与えてくれる趣味を見つけましょう。

・増えがちな出費

レジャー費、子や孫への援助、医療費、イレギュラーな出費。子どもが自立して手が離れ、夫婦2人のレジャー費がふくらみがちになります。年齢も重ねているので、通院する機会も増えてくるのがこのライフステージ。子どもや孫から、結婚や住宅購入の援助を頼まれることもあります。

必要なものや人とだけつき合うのが、リタイア生活を豊かにする!

目が悪くなったり、指先が弱くなったりと、明らかに体にも変化が表れてきます。「こうしたことを見越して、いつも使う道具はすぐ手が届く位置にまとめるなど、使いやすい収納にしておきましょう」(辰巳さん)。

掃除も行き届かなくなるので、家事がやりやすいようにしておくことも大切。不要な家具を減らし、作業の際にどかす手間をなくすためにものを少なくする。こうして、本当に欠かせないものだけで暮らすことで、ものを探したり、管理したりするストレスがぐっと少なくなります。

突然の入院なども考えられるでしょう。万が一のときも家族が困らないようにとの観点からも、日頃の整理を心がける必要があります。
また、お金の使い先は、質のいい食材など健康維持や毎日の暮らしを豊かにするものを優先したいもの。

「さらに、なんとなく続けているおつき合いは減らし、大切なおつき合いは家で行いましょう」と横山さん。自宅でおもてなしをすれば出費も押さえられて、その場の流れで2次会にといった予定外の行動もなくなります。「お金のかからないライフワーク的な趣味を見つけるのもよいでしょう」(横山さん)。