寝ても疲れが取れない…。そんな悩みを抱いたことはありませんか。その背景には睡眠時間だけでなく、睡眠のリズムや生活習慣に原因があることも。今回は、音声メディアやSNSで、「kagshun」として、医学的知見に基づいてよりよく生きるヒントを発信する、精神科医・加賀谷隼輔さんに、疲れやすさの原因とそのケア方法を伺いました。
すべての画像を見る(全3枚)睡眠は時間だけでなく「リズム」も重要
「必要な睡眠時間は、大人では6時間以上がひとつの目安ですが、個人差があり、一概に『○時間』とは言いきれません。また、睡眠時間の長さだけでなく、毎日何時に起きるかという規則性もとても重要なんです」と、加賀谷さんは語ります。
「眠る時刻が日ごとに動くと、体は「いつ休む準備をすればいいのか」足並みがそろわなくなってしまい、脳だけでなく、それぞれの臓器がうまく機能しなくなることが考えられます。結果として疲れがとれにくい体になってしまうことに」(加賀谷さん・以下同)
また、朝、日の光を浴びることで、眠りを促すホルモン「メラトニン」の分泌が抑制され、頭をはっきりさせてくれるという効果も。さらに、14〜16時間後にふたたび分泌され始め、自然と眠気を感じるようになるのだそう。睡眠の質を高めるためにも、起床時刻を規則正しくすることが重要です。
「何時何分と厳密に合わせる必要はなく、1時間前後のズレなら問題ありません。大切なのは、なるべく起きる時間の枠を決めておくことです。僕の場合は、夜11時前後に寝て、朝は6時半から7時の間に自然と目覚めるルーティンになっています」
1:「カフェインですっきり!」は一時的な効果
疲れをとるためのアクションがかえって疲れを増す原因になることも。加賀谷さんは、エナジードリンクやコーヒーなどのカフェインのとりすぎにも警鐘を鳴らします。
「脳を酷使すると『アデノシン』という物質が増え、眠気のサインを送ります。カフェインはこのアデノシンの受容体に先回りしてはまり込み、眠気の信号を一時的にブロックするため、すっきりしたように感じますが、これは一時的なもの。疲れがリセットされるわけではありません」
また、カフェインの覚醒効果は、睡眠の妨げにもなります。体内でカフェインが分解され、血中濃度が半分となる“半減期”は健康な大人で平均およそ4時間ほど。体からほとんど消えるまでには、さらにその何倍もの時間がかかると考えられます。
「カフェイン自体が悪者というわけではなく、量と、とるタイミングの問題なんです。寝る時間のだいたい6〜8時間前からは、カフェインの入った飲み物を控えることをおすすめしています」
また、不安感などメンタルの不調につながるケースもあるといいます。
「不調を抱える患者さんに話を聞くと、コーヒーを1日5〜6杯飲んでいることも少なくありません。動悸や不安感、寝つきの悪さに心当たりがあるなら、まずはカフェインの量を見直してみる。それだけでも十分なセルフケアになります」
2:情報過多なSNSも疲れの原因に
睡眠や飲食物以外にも、見えにくい疲労の原因があると加賀谷さんは指摘します。それが、SNSなどから受動的に流れ込んでくる情報です。
「一度気になる情報を見ると、アルゴリズムの働きによって、SNS上に似たような情報ばかりが表示されますよね。趣味の活動など、自身の興味のあるトピックであればいいですが、ネット上のトラブルなど気持ちが落ち込む情報がくり返し表示されることも。紙の新聞なら、ひとつの記事を読んだら、次々話題はきり替わりますよね。でもSNSはそういう仕組みになっていない。受け身のまま、偏ったバランスの情報を浴び続けることで、知らないうちに気持ちを消耗させていくおそれはあると思います」
SNSでは、登録した単語などを非表示にできるミュート機能の活用もおすすめだといいます。
「僕自身、目にすることで心が消耗しそうだと感じるネガティブなテーマは、関連語ごと全部ミュートに入れて、心が消耗しない環境を、意識してつくるようにしています」

