鉄フライパンは調味料以上に味が決まる

鉄フライパン
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調理法によっても味が変わるし、道具によっても味が変わる。少ない調味料で料理の基本を学んでみようとしたとき、調理器具も信頼できるものを使いたくなった。もう一度0から学んで、この鍋ならこう、このフライパンならこのくらい、という感覚も身につけていきたい。

ステンレス鍋も鉄フライパンも、適当に使っているときには「なんかくっつきやすい」「洗いにくい」という印象があった。でも落ち着いて正しく使えば本当はそんなに扱いにくくもないし、なによりうま味の味方だった。

味の濃さよりうま味を重視するようになり、うま味がいつ出るのか調べているうちに、メイラード反応や、蒸したり無水調理で成分を凝縮させたりすることが重要だと知った。

そういったことがちゃんとできる鍋やフライパンは、調味料以上に調味料の役目を果たすことがある。

調味料は外食や旅行と同じ種類の刺激をくれる

とはいえ、調味料は楽しい。ひとビンで旅の気分を運んでくれる。

レストランや旅先で食べた味を再現しようとがんばってみるのが好きだ。おしゃれな店であらびきコショウがよく振られているな、とか、四川料理をつくるときは調味料も本場のものがいいな、とか。舌の記憶を頼りに、あの日あのときの味を今ここに蘇(よみがえ)らせる。

2020年はほとんど旅もできなかったし外食の機会もかなり少なかったので、すがるように調味料を集めていた。完璧に同じ味をつくり出すのはなかなか難しいけれど「50m先にあの味の背中が見える気がする」とか「あっ今一瞬走り抜けていった」と感じるだけでもいい。味の残像。ほんのわずかでも思い出が呼び起こされたのなら、調味料はただ味にアクセントをつけるためのものではなく、タイムトラベルの薬と言っていいと思う。

ほかにも、藤岡みなみさんの著書『ふやすミニマリスト 所持品ゼロから、1日1つだけモノをふやす生活』(幻冬舎刊)では、所持品ゼロから1日1つだけものを増やす100日間の暮らしを通して、「本当に必要なもの」との向き合い方や、暮らしの心地よさを見つめ直すヒントが綴られています。

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