雑誌『天然生活』『クウネル』などで人気のエッセイスト・広瀬裕子さん(60歳)。ここでは、60歳を迎えるまでの日々で考え、選択し、アップデートしている暮らしの知恵や思いを書き下ろしたエッセイ集『60歳からあたらしい私』より、グレイヘアになるまでの経緯を抜粋して紹介します。
すべての画像を見る(全4枚)「ヘアカラーをやめよう」そう決意した日
私がヘアカラーをやめることにしたのは、50代半ばを過ぎたときのことです。髪色を白くしていくなかで、気が重いのはその過程ではないでしょうか。私に関して言えば、髪色が白くなるより、途中の中途半端な状態が憂うつでした。
ショートカットでも、白い髪にするには1年かかります。今思うと1年はあっという間ですが「今日から1年後」と言われると躊躇してしまいます。今までカラーをしていた髪色と本来の髪色の2色になった自分を想像し、「もう少し先にしよう」。そう思ってしまいます。
白い髪がすてきな俳優さんもいます。でも、私たちが目にするのは、白い髪になったときの姿。途中は、わかりません。「どんな風に過ごしていたのだろう」と想像します。もし、気持ちよく自分本来の髪色にしていく方法があるとしたら、カラーをやめたいと思う人もいるのではないでしょうか。
グレイヘアを目指すときに決めたこと
白い髪にするとき、決めたことがあります。それは、同時に髪をのばすことです。
白い髪がある程度のびてきた時点で切りそろえるのが、最も早くすっきりする方法ですが、それ以外にもやり方はあるはずです。その「それ以外」を試してみようと思いました。
選択や方法がいくつかあれば、自分に合うやり方が選べます。「カラーをやめよう」と心を決めるきっかけになるかもしれません。なにより私自身が、時間をかけ、白い髪にしていくのです。過程も楽しみたいという思いがありました。