50代でスペインに単身留学中のRitaさんが感じた、現地の人々の魅力を5つご紹介します。先日、留学先で電気とインターネットが途絶えるトラブルが発生。約8時間続いた非日常のなかで、彼女が目の当たりにした新鮮で心温まる行動をレポートします。

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商品がなくなったスーパーの棚
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突然の電気とWi-Fiがきれるトラブル。そのときスペインでは…

入れない地下鉄

突然、日常が止まった午後。それはいつもの昼下がりのことでした。スペイン全土から電気とWi-Fiが消えたのは12時30分。そのあと約8時間もの間、不通が続く日があったのです。

そのとき、私は知人と会話中でした。最初は私だけ? このビルだけ? マドリードだけ? となにも分からない状況でしたが、スペイン全土が影響を受けていたようです。

そして、「非日常」がスタートしました。スマホの充電はまだあるけど、Wi-Fiはつながらず、世界との接点がふっと途ぎれた感覚に。信号は消え、地下鉄は止まり、カフェの電灯も音楽もすべてがない生活。人々は戸惑いながらも、どこか落ち着いていて楽しげな空気が新鮮でした。

この出来事をきっかけに改めて感じた、スペインの魅力を5つご紹介します。

1:即席コミュニティの力

輪に座って話すスペイン人たち

普段は無言で通り過ぎる人々が、停電をきっかけに言葉を交わし始めました。大きな困難が起きたとき、人は身近なだれかとつながろうとするのかもしれません。

カフェのテラスでは「ビールが冷えているうちに飲むしかないね! 早く早く!」と笑いながら自然と輪ができ、だれかがギターを持ち出し、知らない人が一緒に歌い出し…。不通という“不安”のなかにいながら、それを消すように、言葉や笑いが街を満たしていきました。

さらに驚いたのが、スペイン人の「即席コミュニティの力」。見知らぬ人同士でも、あっという間に「仲間」になり、小さな会話が始まり、話題が見つかればすぐに笑い合い、食べ物も分け合う。だれとでも気さくに打ち解ける力は、スペインでは日常のごく一部。災害時だからこそより目に入るこの光景は、胸がじんと温かくなるものでした。

2:家族社会の絆力

テラス席のようす

まずは家族に連絡! がスペイン人の鉄則。微かに残るWi-Fiを頼りに電話回線をつなげ、なんとか家族に連絡しようとする人々ばかりでした。あの人は大丈夫そう、あの人は今歩いて戻ってくる最中…と、ご近所の情報がどこからともなく連絡網のように流れてきたことが、不思議でした。

スペインの人々は、ちょっと知っていればもう家族なんです。たとえば結婚式では、「あの人は、たしか叔父の従妹の親戚の…」といった知人レベルも、ファミリーとして紹介。つながりが驚くほど幅広く、正直どこのだれなのかあまり詳しくないけれど、「家族だよ」と紹介するグローバルな環境なのです。

3:柔軟な適応力

道路のようす

当日、電気がない、Wi-Fiがない、スマホの電池も残りわずか。そんな状況でできることは限られてきました。私はノートとペンを取り出し、頭のなかの考えを言葉にしてみました。人と会話し、ただ風の音を聞く。普段はスマホの通知と色々な情報でいっぱいの脳が、スーッと静かになることを感じました。

外のベンチにはのんびり座るスペインの人々。後々のニュースでは、公園で歌をうたい、ゲームを楽しむ大人たちに、子どもがシャボン玉に喜ぶ姿。電気がないならバーベキューだ! と炭火を持ち出す人たち…。

映像だけ見ると、まるで休日の公園そのものでした。今を楽しめることを探しだす、その柔軟な姿勢に、驚きさえ覚えました。