築古賃貸マンションのメリットとデメリットについてご紹介します。夫婦ふたりで築35年の賃貸マンションで暮らす深尾双葉さんは、背負うものを少なくしたいという考えから賃貸を選んだものの、喉から手が出るほど家が欲しいと思った時期もあったそう。しかし、ものを手放し、執着が徐々に薄れていくと、賃貸暮らしに心から満足できるように。築古物件に8年ほど住んで感じたことをレポートしてくれました。

人が部屋を横切っている様子
小さな部屋が細かく分かれているのも、築古物件でよく見かける間取り
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メリット1:シンプルな建具のデザインや素材が魅力的

ドアの写真
ドアの素材とドアノブの素っ気なさが好み

築古物件のなかには、内装がきれいにリノベーションされた物件もいくつかあるそうですが、私の住む部屋は、建てられた当初の古い内装がそのままに残されています。

私が物件選びの際に大切にしているポイントに「建具のデザインと内装の素材感」があります。以前住んでいた物件の建具が好みで、同じ系列である現在のマンションに引っ越したほどです。

飛び抜けてすばらしいデザインや高級な建材を求めている訳ではなく、むしろ素っ気なさすら感じさせる「作為のない簡素な美しさ」が重要で、手もちの家具や古道具といかになじむかをよく考えています。

そのため、DIYで手を加える前提で入居するのではなく、古さのなかに感じる美しさを見出し、ありのままを受け入れる。そのような目線で物件選びを行っています。

新築は清潔感があってうらやましいと思う反面、自分好みの物件が見つかることは少ない。そのため、常に築古物件から目を通すクセがつくようになりました。

メリット2:畳の部屋があること

畳の部屋
削ぎ落とせば削ぎ落とすほど、畳のある部屋は美しさが際立つ

物心ついたときから私の部屋は六畳の畳のある部屋でした。洋間もありましたが、長く過ごしていたのは、肌に直接触れたときに気持ちのいい畳の部屋。日に焼けて枯れた風合いになった姿も、い草の香りで満たされた和室も、どちらも懐かしくよい思い出です。

最近はライフスタイルの欧米化やコストの面で畳のある家は減りつつあると聞きます。今の家にはソファがない代わりに、畳の上でゴロンと横になる生活を送っています。適度な硬さがあるので長時間だらだらと過ごすこともなく、よいメリハリが生まれているように感じています。

そしてなにより畳は日本人であること、日本文化の奥深さにふと気づかせてくれる瞬間がいくつもある。忘れかけていたことを思い出させてくれる存在として、私にとっては欠かすことのできない大切な場所の1つです。

家族も畳のある暮らしに賛成していて、次の引っ越し先も畳の部屋があればよいねと話し合いを進めているところです。

メリット3:金銭面など、数々の負担が減った

テーブルの上に資料がおかれている
地方の築古賃貸物件であるため家賃は安く家計に優しい

築古賃貸物件に住むことで、金銭面はもちろん、生活するうえでの数々の負担が減ったように感じています。

住み始めのスタートからすでに古い状態であるため、築浅の賃貸マンションよりも幾分かは気を使わずに住めるというのはメリットのひとつだと思います。もちろん新たな傷や汚れはつけないよう気をつけて過ごしていますが、気兼ねなくのびのびと生活することができています。

また、家賃も比較的安く抑えられています。マンションなのでゴミ当番はなく、ご近所づき合いも無理をしなくてよい。壊れた部分は大家さんに相談をすればすぐに直していただける。支払うのは毎月の家賃だけ…と、人によっては好条件であるというのが築古賃貸マンションなのではないかと感じています。

実際にわが家も入居後から、ガスコンロ、換気扇、インターホンなどを電話一本で新しいものに取り替えに来ていただきました。

最初にお話ししているように「背負うものはできる限り少なく」を夫婦共通の考えとしているため、今の暮らしでは、ローンを組まないこと、そしてクルマを持たない生活も意識しています。近くにお手頃な食材が手に入るスーパーと公共交通機関があれば、物価高のこの時代も負担なく軽やかに生きていけるのではないでしょうか。