日常に変化を求めるシニア世代に人気なのがボランティア活動です。成人した子どもがいて、現在はひとり暮らしをしている著述家の中道あんさん(50代)は、年に一度は必ずやると決めているボランティア活動があると言います。ボランティア経験豊富な中道さんに、50代以降のボランティア参加のコツを詳しく聞いてみました。

中道さん
中道さん
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ボランティアで奈良県の神社へ

桜が舞い散る、晴天の日曜日。いつもより30分早く起きてさっと身支度を整えて家を出ました。電車を乗り継ぎ2時間、向かったのは奈良県桜井市にある三輪恵比須神社です。三輪といえば日本三大そうめんと呼ばれる『三輪そうめん』で有名な場所。そして、歴史的にも非常に意味ある場所でもあります。

日本で最初に広かれた市場は、“つばいち”と呼ばれる市。三輪山の南麓の金星というところで、初瀬川の川べりに物々交換の市として開かれたと言われています。市場の守護神として多くの人々に尊崇(そんすう)されてきた三輪のえべっさんとして1000年以上親しまれています。

さて、朝早くから向かった理由は、日本全国の神社で清掃奉仕活動を行う「一万人のお宮奉仕」の活動に参加するため。その理念は、「自然の恵みと繋がる命に感謝し、愛と喜びをもって和合し奉仕の心を広げる」ことにあります。この活動はだれでも参加できて、私も3年ほど前に友人から教わって、初めて参加した神社が三輪恵比須神社だったのです。それから「年一度は三輪恵比須神社の掃除に行く」というのを自分の決めごとにしています。

近年、氏子は減少の傾向にあり、神社の運営にも深刻な影響を及ぼしています。とくに地方は高齢化や過疎化が進んでおり、宮司ひとりで神社をお守りしなければならないケースもあるようです。そうなれば、神殿や境内の掃除が行き届かなくなります。すると、観光などで参拝する人も減少して、ますます神社運営が悪化するそう。私も一度、島根県のとある神社で清掃奉仕活動したときはその状況を知り、驚いたものです。

洗っても洗っても雑巾がすぐに真っ黒になるほど神殿にはススがたまっていたし、参道脇の水路には落ち葉がぎっしり詰まっていました。それを30人くらいで半日かけてきれいにしたことがあります。

ボランティアは「してあげる」ではなく「させてもらっている」

中道さん

あのときは、本当に掃除の甲斐がありました。ひとりではできないことも力を合わせれば少しの時間で解決する。それがすばらしいと思うのです。その結果、神社に参拝者が増えればいうことなし。

神社の掃除奉仕のいいところは、なんといっても無心になって「きれいにする」という行いそのものにあると私は思っています。ボランティアというと、つい「してあげている」という気持ちになりがちですが、本当は「させてもらっている」です。

だれかのために動いているようで、じつは自分の心が整ったり、気づきをもらったり。結局、いちばん助けられているのは自分だったりするなと思ったりして。熱心にこの活動に勤しむ友人の「神社の掃除は瞑想である」という言葉は、まさに言い得て妙です。