シングルファザーとして、フランス・パリでひとり息子を育ててきた作家の辻仁成さん(65歳)。「おいしいものを息子に食べさせたい」と、執筆活動をしながら愛情をこめて日々の食事をつくり続けてきました。そんな辻さんが、息子が巣立ったあとの自分だけの食事をどうしているのか、また、愛犬の食事についても話を伺いました。
すべての画像を見る(全4枚)家族のためのごはんから「自分のため」のごはんに
約3年前には息子が大学生になってひとり暮らしをはじめ、辻さんも「家族のためのごはんづくり」からは卒業することに。自分のためだけにつくる食事となると、つい手抜きをしがちですが、辻さんの場合は変わらず料理を楽しんでいるそう。
「そういう自分のための料理を、僕は『ひとりで生きる飯』と呼んでいるんです。たしかに自分ひとりのごはんにエネルギーを傾けるのは難しいけど、毎日の食事がおいしいと思えるかどうかで生きる醍醐味は変わってきますよね。だって朝起きて夜寝るまでのあいだでなにがいちばん楽しいかっていったら、おいしいごはんを食べるときなんですよ。これは絶対に間違いない。自分でつくればお金もかからないですしね」
なによりも、毎日を元気に過ごすためには、「食べものに気を遣うことが大事」と辻さん。
「手を抜くのはかまわないけど、ちゃんと自分の体を守るものを食べたい。『ああ、おいしかったな』と思えるものは、体にもいいんですよね」
レシピはシェフに直接聞いて自分のレパートリーに
料理のレパートリーは、SNSや料理本のほか、レストランでヒントを得ることが多いそう。
「食べたことのない料理があったら、シェフに『どうやってつくるの?』と聞くんです。この前、イタリアへ旅行に行ったときも厨房へ入れてもらって、知っている限りのイタリア語を駆使して本場のカルボナーラのつくり方を教わりました。ポルトガルでも郷土料理のつくり方を覚えてきたし、ふだんは近所のカフェやシェフの友人に聞くことも。
ちなみに日記に載せているレシピには正確な分量は書いてないけど、きっとESSEの読者のみなさんなら、この料理なら調味料はこれくらいだな、と分かるだろうから。あくまでも、献立や組み合わせの参考として見てもらえたら」