だれもが迎える「更年期」。本記事では、更年期や閉経にまつわる疑問や基礎知識について、少しでも前向きに過ごすためのアドバイスとともに専門医に解説していただきます。お話をうかがったのは、女性のヘルスケアや更年期に詳しい産婦人科医の粒来 拓(つぶらい・たく)先生です。
すべての画像を見る(全5枚)昨今、閉経年齢は上がっている?
更年期を前向きに過ごすためのヒントを紹介する連載企画「更年期のホンネと処方箋」。第2回目は、更年期のことを正しく知って対処するための基本的なお話しを伺います。
――まずは、更年期と閉経の定義について教えてください。
「更年期とは、閉経を挟む前後5年の計10年間のこと。そして閉経は、生理が来なくなって1年以上経った最後の生理が来た時点を指します。つまり、生理が来なくなって1年過ぎたら、さかのぼって1年前が閉経のタイミングです。日本人の平均的な閉経年齢は50.5歳といわれています」(粒来 拓先生・以下同)
――最近は50歳を過ぎても、「私、閉経はまだなの…」という女性が、結構いるように感じます。
「そうですね。クリニックを訪れる患者さんも、52歳から56歳くらいでも生理がある方は多いです。これは私の実感ですが、閉経の年齢が少し上がっているように思います。最近では、閉経年齢の中央値は52歳に上がっているという報告もあるようです」
――閉経の年齢は、徐々に上がっているものなのでしょうか?
「江戸時代では40代に閉経を迎えていたといいます。数年の差ではありますが、時代とともに閉経が遅くなっている傾向は否めないですね」
――閉経はさかのぼって判断をするため、本当のところ今の自分が、更年期にあたるかどうかも正確に判断できないですよね?
「医学的には45~56歳の間で閉経をすることが正常とされます。つまり、閉経年齢は“個人差”ということだけで10年の差があります。その閉経年齢の前後5年間を含めて『更年期』と指すわけですから、40歳~60歳までの20年間のどこかで、だれもが更年期を迎えることになります」
――閉経が早い原因はあるのですか?
「卵巣機能が停止した状態が閉経です。卵巣機能が低下するのは、さまざまな理由がありますが、家族歴も関与します。もし、自分の母親の閉経が早かった場合は、子も閉経が早くなる傾向があります。また、卵巣の手術経験がある人は、卵巣を損傷している可能性があるため卵巣機能の低下が早い傾向があります。広く知られている病気に『チョコレート嚢胞(のうほう)※』がありますが、その病気で手術した人は閉経が比較的早くなる懸念がありますね」
※ チョコレート嚢胞:卵巣内に子宮内膜症の病巣ができる病気