淡色のシャツでふわりと春の気配をまとった原田知世さん。人をホッとさせる優しい微笑みと、57歳を迎えた今も変わらない透明感のあるたたずまいは私たちの憧れです。現在公開中の最新出演映画『35年目のラブレター』のお話とともに、毎日を幸せに過ごす心がけについて聞きました。
すべての画像を見る(全2枚)方言でのお芝居。イントネーションよりも難しかったのは…
映画『35年目のラブレター』は、貧しい家に生まれ、読み書きがほとんどできないまま大人になった男性が、定年退職を機に最愛の妻にラブレターを書こうと決意し夜間中学で文字を学び始める…という実話をもとにしたストーリー。
映画では主人公の西畑保さんを笑福亭鶴瓶さんが、妻の皎子(きょうこ)さんを原田さんが演じていますが、オファーを受けたときのお気持ちや作品の印象はいかがでしたか。
「2023年にお話をいただきました。奥様にラブレターを送りたいという一心で、定年後から読み書きを学び、長い時間をかけて書き上げた保さんの人生が実話である事に、まず感動しました。そして、その保さんを支え続けた妻、皎子さんもほんとに素晴らしい方だと思いました。皎子さんの保さんを思う気持ちには、時に母のような愛を感じられます。互いを同じくらい大切に思い、日々感謝をしながら、共に人生を歩んだふたりのささやかな暮らしの中にはいつも笑顔がありました。こんなおふたりだからこそ生まれた尊い愛の形を見せてもらった気がします」
奈良を舞台にした物語でしたが、方言でのお芝居は初めてだったと聞きました。
「そうなんです。この物語には、方言だからこそ生まれる夫婦の掛け合いのあたたかみや面白さがあると思ったので、私も覚悟を決めて方言に取り組みました。関西の人は、普段の暮らしの中に笑いというものが根付いていますよね。もう、笑いのベテランという感じ。ですから、イントネーションを覚えることより、笑いの間やタイミングを見つけるほうが難しかったです。正解はわかりませんが、監督も楽しんで撮影されていましたし、私自身も楽しかったです。くすっと笑えて泣けて心が温かくなる作品になっていると思います」
初共演の鶴瓶さんと夫婦役に
夫婦の掛け合いには見ているこちらも心が温まりました。初共演だった鶴瓶さんとは、どのように夫婦像をつくられていったのでしょうか。
「鶴瓶さんはとても自然体で、その役にすっと入っていける方。お芝居と現実の境目を感じさせないので、そばに寄り添い、保さんを演じる鶴瓶さんを見て感じることで、自然と夫婦のいい空気感が生まれたような気がします。鶴瓶さんのつくる和やかな空気のおかげで、私も自然体でいられました」
西畑夫婦の若い時代は、重岡大毅さん、上白石萌音さんが演じていましたが、完成作品をご覧になっていかがでしたか。
「重岡さんも上白石さんも素晴らしかったです。私は最初に脚本を読んだとき、2人の出合い、そして、愛にあふれた夫婦の絆に涙が止まらなくなってしまいました。お二人のお芝居は映画が完成されるまで見ることが出来なかったのですが、ある日、西畑家のシーンの撮影でセットに入った時、部屋の中に重岡さんと上白石さんの夫婦の写真が飾られていて、「あぁ、ふたりはここで温かい日々を送っていたのだなぁ」と胸が熱くなりました。私たちが現場でご一緒したのは1日だけでしたが、この時、重岡さんと上白石さんからバトンを渡されたような感覚でした。この映画は温かな愛と優しさが溢れる作品ですので、幅広い世代の方に届いたらと思っています」