温暖化防止や持続可能な循環型社会の実現に取り組み、社会に貢献している企業や自治体、学校などを表彰する「第33回地球環境大賞」の受賞者が決まりました。さまざまな賞のうち、「地球環境大賞」は、キヤノン株式会社に贈られることに。半導体デバイス製造において消費電力削減・環境負荷低減を実現する新技術が評価されました。今回の全受賞者と受賞内容の一部をご紹介します。

地球環境大賞

第33回 地球環境大賞 受賞者一覧

●地球環境大賞
【受賞者】キヤノン株式会社
【受賞内容】近未来デジタル社会を支える最先端半導体デバイス製造において消費電力削減・環境負荷低減を実現する「ナノインプリントリソグラフィ」技術~カーボンニュートラルに向けた社会課題解決への挑戦~

●経済産業大臣賞
【受賞者】株式会社UACJ 東洋製罐株式会社
【受賞内容】環境負荷を低減した次世代の飲料缶蓋「EcoEnd™」を共同開発

●環境大臣賞
【受賞者】栃木県宇都宮市/栃木県芳賀町/宇都宮ライトレール株式会社/宇都宮ライトパワー株式会社
【受賞内容】次世代型路面電車(LRT)を基軸とした100年先も持続可能なまちづくり~地域の再エネ100%で走行する「ゼロカーボントランスポート」の実現~

●文部科学大臣賞
【受賞者】鹿児島県立市来農芸高等学校
【受賞内容】コオロギをタンパク源として養鶏に活用する研究を実施

●国土交通大臣賞
【受賞者】大東建託株式会社
【受賞内容】LCCM 賃貸集合住宅「NEW RiSE LCCM」の商品化から普及・拡大への取り組み~賃貸集合住宅のCO2排出量は「ゼロ」から「マイナス」へ~

●農林水産大臣賞
【受賞者】日本製紙株式会社
【受賞内容】「特定苗木」の普及拡大に向けた採種穂園の整備と苗木生産

●総務大臣賞
【受賞者】KDDI 株式会社
【受賞内容】ペロブスカイト太陽電池を基地局で活用した実証実験を実施

●日本経済団体連合会会長賞
【受賞者】大成建設株式会社 日本通運株式会社
【受賞内容】「巡回回収システム」の構築による建材サーキュラーエコノミーの実現

●日本商工会議所会頭賞
【受賞者】須山建設株式会社
【受賞内容】「普段着のZEB」を開発・実践、地域の脱炭素×ZEB化を推進

●特別賞
【受賞者】大日本印刷株式会社
【受賞内容】武蔵野の自然再生へ、本社敷地内に「市谷の杜」を育成中

●奨励賞
【受賞者】東日本電信電話株式会社
【受賞内容】地球環境の保全と水産業の発展をめざす陸上養殖~地域循環型社会の実現~

●奨励賞
【受賞者】香川県立多度津高等学校
【受賞内容】豊かな海の再生で人・社会・自然をつなぐ「讃岐うどんウニ」project

半導体デバイス製造の消費電力削減・環境負荷低減を実現するキヤノンの「ナノインプリントリソグラフィ」技術が大賞を受賞

光露光技術とナノインプリント技術の製造工程比較
光露光技術とナノインプリント技術の製造工程比較
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キヤノンは、世界で初めて「ナノインプリントリソグラフィ」(NIL)技術を用いた半導体製造装置の製品化を実現し、2024年9月、米国の半導体コンソーシアムである「Texas Institute for Electronics」へ第一号機を出荷しました。NIL技術は、従来の露光技術方式と比べ、製造プロセスの消費電力を約90%削減でき、大幅な省エネや環境負荷低減が期待できる新技術です。

装置用のマスク
装置用のマスク

経済産業省は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において、グリーン成長戦略を支えるのは強靭なデジタルインフラであり、グリーンとデジタルは両輪であると述べたのに加えて、半導体・情報通信産業を成長分野として位置づけています。微細な回路パターンが形成された最先端半導体の需要増に伴い、半導体デバイス製造の省エネルギー化への関心が高まり、半導体の技術革新は急務となっています。

15nmパターン形成時における、既存の光露光技術(ArF液浸、EUV)とNILの消費電力比較
15nmパターン形成時における、既存の光露光技術(ArF液浸、EUV)とNILの消費電力比較

NILは、レジストをウエハー上に塗布した後に、回路パターンを刻み込んだナノレベルの型をハンコのように押しつけて形成。光露光技術にある現像工程を必要としないため、電力だけでなく水使用量、廃液排出量、化学物質排出量を削減し、環境に対する負荷を低減できます。同社は、NIL技術を用いた半導体製造のエコシステムを描き、外部企業等との連携を主導して装置および周辺工程の問題をクリアし、量産向けのNIL技術を確立しています。

初出荷した、NIL技術を使用した半導体製造装置「FPA-1200NZ2C」光露
初出荷した、NIL技術を使用した半導体製造装置「FPA-1200NZ2C」光露

NIL半導体製造装置は、半導体以外に、微細な円柱状の光学素子を並べた構造をもつ「メタレンズ」(METALENS)と呼ばれる光学素子の製造への適用も期待されており、レンズ研磨による環境負荷(研磨クズの排出や水使用等)を低減できます。

●地球環境大賞とは?

「産業の発展と地球環境との共生」をめざし、産業界を対象とする顕彰制度として1992年に創設。温暖化防止や持続可能な循環型社会の実現に寄与する製品・商品・サービス・技術などの開発や環境保全活動・事業の推進、地球環境問題に対する意識の一段の向上などの面で顕著な成果をあげ、社会の模範となる功績をおさめた企業、自治体、学校、市民グループなどを表彰している。受賞者は、これまで延べ335件を数える。

※授賞式は、令和7年4月7日(月)、東京・元赤坂の明治記念館で行われます