いろいろな感情がこみ上げてきた
クルマの後部座席に戻ると体がどっと重く感じた。信頼しているがやはり心配。ひとまず手術を迎えられた安心もある、けど油断したら怖いし、いろんな感情が沸いてはたまってついに涙腺が決壊した。ダムが壊れたような涙の出方だった。
パニックを放つための涙だったのか数分で引っ込んだ。たかだか抜歯で大袈裟やと思われるかもしれへん。自分よりも犬の身体になんかあるほうが気に病むよな。
預けてからお迎えの17時まで7時間以上あったが、家まで帰らず近場でいようと母と決めていた。都会には大きなショッピングモールもいろんな場所があったが、どこでなにをしていても落ち着かない。視界のピントが合わない。唯一買い物できたのはペットショップで、犬のやわらかいおやつと綿が入ったオモチャを買った。
犬の歯が折れてから、犬という生き物の歯は非常に弱いことを知って、自分の不勉強さを猛省している。以前も書いたが、一般的に両手で持ってしならないようなおやつ、そしてテニスボールや硬いオモチャも、歯にはよくないらしい。
そう聞いてからペットショップにいたら考えてしまう。大前提として私の無知や思い込みが悪いのだが、しかしさまざまなペット用品の会社から、両手でしならないような硬いおやつ、その硬いおやつを噛むことを目的としたものが売られている。あまりにも社会の提供と犬の歯の弱さが釣り合っていなくはないか。
難しいけれど、犬はタマネギを食べてはいけないくらいのみんなが知っている常識にまで引き上げていければいいなと思うし、微力だがこれから発信していきたい。時代とともに犬を取り巻く環境や育て方も変わっていると思う。
16時30分頃、再び病院で受付をして、ほかの方もいる待合室で母と肩を並べる。緊急の電話がかかってこなかったのできっと無事に終えたのだろう。待合室にいたら犬の鳴き声が聞こえてきた。「鳴いてるの、うちかなぁ…」と母が不安そうに呟く。そう言われたら私もそう思えてきて、二人してうろたえた。あとで分かったが、全然うちではなかったよ。
診察室に呼ばれて、すぐに犬と会えるのかと思ったら、まずは血液検査の結果、それから施術内容を説明してくれた。この日、抜歯したのは左下犬歯と右上前歯の2本であった。
そして歯のエナメル質が欠けて、象牙質がむき出しになっている1本を修復してくれた。
抜歯後のレントゲンを見せてもらうと、犬歯がしっかり根本から抜けていた。犬歯は歯茎に埋まっている根っこがとても長いため、ほかの歯に比べても難しいらしい。
心配していた麻酔も、す〜っと目を覚まして落ち着いていたらしい。全身のレントゲンも見せてもらった。 愛犬のレントゲンを見るのは初めてだ。このあとレントゲン写真を貼るので見たくない方は飛ばしてください。怖いものではないが苦手な方もいますよね。
レントゲン写真を見ながら、骨の状態や気管の説明を受けた。気をつける部分はあるが健康体だと褒めてもらえた。犬の健康に花丸をもらえてうれしい。舌もすごくきれいらしい。
すべての画像を見る(全6枚)詳しい説明を終えて「そしたら○○ちゃんを連れてきますね」と先生が部屋を離れた。この時点では私と母は、待合室で聞いた鳴き声を犬だと思っている。