大きな問題に直面しているわけではないのに、なぜか「幸せ」を実感できず、無味乾燥な日々が過ぎていく。将来の不安にとらわれすぎて今を楽しめない、充実して見える他人の暮らしが気になる…だれもが陥りがちなモヤモヤ期。暮らしのVlog「hibi hibi」が人気のデザイナーasakoさんも、以前は心のモヤモヤに苦しめられていたそう。今回は著書『わたしの芝を青くする こころの整理術』の3刷重版を記念してasakoさんにインタビューをし、モヤモヤ期からの脱出方法について教わりました。
すべての画像を見る(全4枚)「やれないこと」の積み重ねで自己嫌悪のループに
YouTubeで暮らしの動画「hibi hibi」を発信している、42歳のフリーデザイナー、asakoさん。なにげない日々の中に潜む「小さな喜び」を発信する動画やSNS、著書が人気を集めています。夫と猫2匹との暮らしは充実しているように見えますが、じつは、かつては、なにをしても心から楽しめないという悩みに苦しめられていたそう。
asakoさん(以下、asako):20代後半くらいからでしょうか。夢だったデザインの仕事につき、好きなように暮らしているのに、どこか満たされない感じを抱くようになって。人と比べて自分は劣っているとか、将来や、働いても増えない収入に対する心配などから、「なにをしても幸せになれない」と思い悩んでいました。
好みのインテリアをそろえてみたり、趣味を広げるべく、登山やキャンプを始めたりしても、今のように心から楽しむことはできなくて…。
――考え方が変わるきっかけはあったのでしょうか?
asako:今振り返ると、この頃の私はあらゆる方面にアンテナを張って、幸せを「手に入れよう」とがんばっていたんだと思います。でも、情報に振り回されるばかりで、家は片づいていないし、仕事は思うようにいかない。「できていないこと」ばかりが目について、自己嫌悪のループに陥っていました。その状態がある日限界を迎えて、変わるために自分と徹底的に向き合おう! と、決めたんです。
ノートに「やりたいこと」を書き出してみると…
asako:ノートを用意して、自分の「やりたいこと」を書き出してみることにしたんです。最初は、サラサラと書けると思っていたけれど、実際にやってみたら、言葉が出てこなくて。それでもがんばって無理やり書き出してみたら、きれいごとばかりが並んでしまいました。小さい頃、将来の夢を書けないタイプだったんですが、そのときの感じと似ているなって。
「自分のことなのに、なんでこんなに書けないんだろう?」と途方に暮れながらも続けていたら、次第に、思ってもみなかったような本音が飛び出して来たんです。それも、普段は使わないような乱暴な言葉で。
――具体的にはどんなことだったのでしょうか?
asako:「こんな仕事したくない!」とか「なんで私が…」とか、人前では使わないようにしているネガティブな言葉がどっとあふれ出てきて。それを見て、私ってイヤな人じゃん! と、気持ちがラクになりました(笑)。ずっとどこかで「いい人」でなきゃいけないと思い込んでいたんでしょうね。本音をしまい込んで、日々、目にする情報の鎧(よろい)で自分をガードして。だけど、そんな鎧は重たいだけ。まずはいったんすべてノートに移して、すっきりしてしまおうと思いました。
――書き出したあとはどんな変化がありましたか?
asako:なにもかも吐き出してしまったら、自然と気持ちが満たされていったんです。おなかがじんわりあたたまるような安心感が得られて、あんなに厚くかかっていたモヤが少しずつ晴れていきました。深呼吸は、ゆっくりと、もう吐ききれないと思うくらいまで息を吐ききると、大きく息を吸えますが、感情も同じなのかもしれません。
そのおかげで、「本当に好きなこと」が、くっきりと明確になりました。今持っていないものを「得ること」ばかりに意識を向けず、「私はこれを大事にしたいんだ」という軸ができ、人と比べることがなくなりました。
――仕事や日常生活でも変化を感じられましたか?
asako:収入の安定のために続けていた下請けのデータ作成の仕事があったのですが、作業内容がどうしても苦手で、時間をかけすぎてしまっていて…。悩みましたが、将来の不安に必要以上にとらわれていた自分に気がつき、仕事を辞退することにしました。結果、「好きなことで収入を得よう」と、手描きのイラストやデザイン素材を販売するなど、より自分らしい仕事を始めることができました。
また、「やれないこと」が自己嫌悪につながっていた家事については、1日の家事の時間割を決め、ルーティン化。「これだけできていれば大丈夫」と、自分に合格点を出せるようになり、モヤモヤと悩むことがなくなりました。