涼しくて秋らしい日も増えてきました。台風の季節でもあります。このような時季は、気温や気圧の変化が激しいことが原因で、めまい・ふらつきが起きやすく、普段からめまいなどで悩んでいる人は、憂鬱なタイミングかもしれません。そこで、扶桑社ムック『10秒でめまい改善体操』の監修者で、横浜市立みなと赤十字病院 めまい・平衡神経科部長の新井基洋先生に、めまい・ふらつきが起きる要因の病気について、また症状が改善される簡単な体操について教えてもらいました。

めまいの原因となる病気とは?
めまいの原因となる病気とは?
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※この記事は、扶桑社ムック『10秒でめまい改善体操』より一部を抜粋し、再編集しています

めまいを引き起こす6つの病気の特徴

『10秒でめまい改善体操』より
『10秒でめまい改善体操』より

新井先生によると、めまい・ふらつきが起きる原因の7割は「耳」にあるそうです。
「耳の奥にある内耳がなんらかの理由で不具合を起こすと平衡感覚に左右差が生じ、体がバランスを取れなくなり、めまい・ふらつきが起きるのです」(以下、すべて新井先生)

めまいには、目がぐるぐる回るように感じる「回転性めまい」、足が地に着かないふわふわと浮いているような状態の「浮動性めまい」、姿勢や歩行が不安定で足元がふらついたり、倒れたりする「不安定性めまい」の3つがあります。

耳の不調のほか、加齢などによる筋力やバランス感覚の低下などさまざまな要因が考えられ、これらの症状は、以下のようななんらかの病気によって生じることが多いです。
新井先生に、めまい・ふらつきを生じる6つの病気の特徴と病状を解説してもらいました。

●1:良性発作性頭位めまい症

「めまいの原因として、いちばん多い病気がこれになります。頭を動かしたときに突然ぐるぐる回る激しいめまいの発作に襲われる症状が特徴です」

●2:メニエール病

「内耳の内リンパ液が増えて、水ぶくれ(内リンパ水腫)になることで発症するとされています。耳のストレス病とも言われ、過度のストレスや過労が原因のひとつです。回転性のめまいと一緒に難聴、耳鳴りが起こるのが特徴です」

●3:前庭性片頭痛

「片頭痛に伴ってめまいが起こる症状がこちらになります。睡眠不足や天候の変化などをきっかけに引き起こされますが、ストレスが最も大きな要因とされています」

●4:前庭神経炎

「こちらは、激しい回転性のめまいが起こる症状になります。めまいが数日~1週間ほど続き、症状が少しずつ軽くなりますが、立ったり歩いたりできず、横になっても激しいめまいに襲われます。ウイルス感染や血流障害が原因とも考えられています」

●5:加齢性平衡障害

「高齢者によく見られるふらつきがこちらです。加齢に伴い体のバランスをとる機能が低下したり、体を支える筋力が衰えたりなど、体全体の機能低下によって起こります」

●6:めまいを伴う突発性難聴

「突然、なんの前触れもなく片方の耳の聞こえが悪くなる病気です。突発性難聴に伴い、大きなめまいが一度だけ起こることもあります」

めまい・ふらつきがよくなる新井先生考案の「めまい改善体操」

『10秒でめまい改善体操』より
『10秒でめまい改善体操』より

人間の体は目、耳、足裏の3か所からバランスに関する情報を受け取り、通常は小脳がそれらをまとめ、体のバランスがとれるようにコントロールしています。しかし、病気などにより、内耳に異常があると小脳で補いきれなくなり、めまい・ふらつきが起きるのです。

新井先生が提唱するめまい改善体操を実践すれば、小脳が鍛えられ、平衡機能が高まり、めまい・ふらつきに強い体をつくることができます。

体を動かすのがつらい人でも、気軽にできて、めまい・ふらつきの症状を改善できるのが「めまい改善体操」です。さっそく実践してみましょう!

●めまい改善体操のポイント・注意点は?

めまい改善体操は、アメリカでめまいの標準治療のひとつとして取り入れられているトレーニングを新井式に改良したもの。その改善体操を始める前に、やり方について新井先生に説明してもらいましょう。

「めまい改善体操を行う際は、動きやすい服装で行いましょう。イスにすわるときは、背もたれのあるイスに深く腰をかけて背筋を伸ばして行うといいです。また、大きな声を出して行ってください。まず、『速い横!』と体操名を言って、さらに『1! 2! 3!』と回数を大きな声で数えながら行うことで、体操の動きがしっかりと脳にインプットされ、前向きな気持ちになります。
もし不安を感じたり体操がつらいと感じたりしたら、『私はめまい(ふらつき)に負けない!』などと言って、自分に暗示をかけるものいいかもしれませんよ」

続けて、体操のポイントと注意点についても教えてもらいました。
「めまい改善体操は、朝または午前中や、1日の疲れがたまってくる夕方以降など、実際にめまい・ふらつきが起こりやすい時間帯に行うことをおすすめします。まずは、1つのメニューを10秒だけでいいので行いましょう。少しずつでもよいので、毎日続けることが大切です。もしも、体操中にめまいが起こったら、一度中止して治まるまで待ちましょう。不安なことがあれば、病院で診察を受け、医師の指示に従ってください」