全国で約248万人が悩んでいるといわれている「めまい・ふらつき」。とくに65歳以上に限ると、約30%の方が、めまいの症状を訴えています。めまい・ふらつきの専門医である、横浜市立みなと赤十字病院 めまい・平衡神経科部長の新井基洋先生が、原因や危険度の見極め、めまい改善体操の注意点を教えてくれました。

※写真はイメージです
※写真はイメージです
すべての画像を見る(全7枚)

※ この記事は、『10秒でめまい改善体操』(扶桑社刊)より一部抜粋、再構成の上作成しております。

めまい・ふらつきが起こる原因の7割は「耳」にあり!

『10秒でめまい改善体操』より
『10秒でめまい改善体操』より

まず、新井先生にめまい・ふらつきはなぜ起こるのかについて聞きました。

「めまい・ふらつきが起こる原因の7割は“耳”にあるといえます。耳のつくりは大きく「外耳、中耳、内耳」の3つに分けられます。そのうち、めまい・ふらつきの主な原因になるのが、「内耳」です。内耳は、私たちの体のバランスを司っていて、聴覚にかかわる蝸牛と平衡機能を司る前庭器(三半規管と耳石器)からなります。この前庭器が、なんらかの理由で不具合を起こすと平衡感覚に左右差が生じ、体がバランスを取れなくなる状態がめまい・ふらつきなのです」

あなたのめまい危険度は?「10歩足踏み」でチェック!

皆さん自身で簡単に、その日のめまい・ふらつきの危険度がわかる方法があります。自分がめまい・ふらつきがしないかどうか見際めたいときに行ってみましょう。

『10秒でめまい改善体操』より
『10秒でめまい改善体操』より

まず、目を閉じて立ちます。両手を前に伸ばします。その場で足踏みを10歩行い、終わったら目を開けます。そのとき、あなたが最初にいた場所からどれくらいずれているか、チェックしてみましょう。左右45度以内は、外出や運転もしてもOKです。左右45~90度にずれた場合は、注意が必要です。90度以上にずれてしまった場合は、危険です。その日の外出は控えてください。

※転倒防止のため、介助者や家族に付き添ってもらいましょう。

新井先生が伝授!10秒だけの「めまい改善体操」

体を動かすのがつらい人でも、気軽にできて、めまい・ふらつきの症状を改善できるのが「めまい改善体操」。アメリカで、めまいの標準治療のひとつとして取り入れられているトレーニングを新井式に改良したものです。

この体操を行う際は、動きやすい服装で行いましょう。イスにすわるときは、背もたれのあるイスに深く腰をかけて背筋を伸ばして行いましょう。また、大きな声を出して行います。「速い横!」と体操名を言ってから、「1! 2! 3!」と回数を大きな声で数えながら行うと、体操の動きがしっかりと脳にインプットされ、前向きな気持ちになります。

また新井先生は、「体が弱っていると、心も弱っているものです。不安を感じたり体操がつらいと感じたりしたら、『私はめまい(ふらつき)に負けない!』『私はめまい(ふらつき)を治す!』と前向きな言葉を発して、よい意味で自分に暗示をかけられます」とアドバイスします。

めまい改善体操は、朝または午前中や、1日の疲れがたまってくる夕方以降など、実際にめまい・ふらつきが起こりやすい時間帯に行うことをおすすめします。まずは、1つのメニューを10秒だけでいいので行いましょう。無理は禁物ですが、少しずつでもよいので、毎日続けることが大切です。もしも、体操中にめまいが起こったら、一度中止して治まるまで待ちましょう。不安なことがあれば、病院で診察を受け、医師の指示に従ってください。

●めまい改善体操1:速い横

「横書きの文字を目で追うときにめまいがする」「目線を変えたときにふらつきがある」という症状に悩んでいる方におすすめの体操を紹介します。

『10秒でめまい改善体操』より
『10秒でめまい改善体操』より

やり方は、まずイスに座り深く腰掛けます。両手を体の正面に伸ばし、肩幅より広めに開きます。両方の手の親指を立てます。

『10秒でめまい改善体操』より
『10秒でめまい改善体操』より

頭は動かさず、目玉だけを動かし、「右」「左」と親指の爪を交互に見ます。大きな声で「1、2、3……」と数えながら10回(10秒)行います。