職人の力を集結し、地元の人々が集う「HOME」に

最大8人まで座れる円卓のある部屋
すべての画像を見る(全19枚)

村上:オーナーが旧板垣邸を購入したのが2019年の12月で、ちょうどコロナ禍が始まった時期でした。一度は取りやめる話も出ましたが、オーナーの意思は固く、2020年4月からリノベ工事を実施して11月にオープン。すぐに緊急事態宣言が出て営業ができなくなりました。そんな人が集まりにくいタイミングだったからこそ、「和食 板垣」のテーマは「HOME」に。地元の方に親しまれ、「ただいま」と帰ってこれるような店を目指しました。そのため和食店には珍しく8人まで座れる円卓もあり、結婚式を行ったこともあるんです。

大きな円卓とアンガールズ田中さん

田中:こういうしっとりとした空間でテーブルを囲むのも、心温まる感じがしますね。結婚記念日とかにもよさそう。

村上:都心とは違ってここは生活圏なので、地元の皆さんに利用してもらうため、かなり抑えめの価格設定になっています。コスパは抜群ですので、ぜひ結婚記念日にご利用ください!(笑)

天井にダウンライトを設けた床の間

田中:いいですね。天井は古いままなのに、ダウンライトが設置されているのもおもしろい。古いものと新しいものが調和していて。床の間のダウンライトも素敵で、実家でやってみたいと思いました。昔の和室って、なんか暗いんですよね。

村上:天井に使われているのは80年以上前の杉板ですから、完全に乾燥していて、少し傷をつけただけでも簡単に割れます。職人さんは小さな穴から少しずつあけてダウンライトを設置していました。

欄間を見上げるアンガールズ田中さん

田中:欄間(らんま)も、もとのままですよね。本当に細かい細工で、きれいですね。

村上:ちょっと割れている部分もあったので、目立たないように補修し、もとの黒ずんだ色に合わせて塗装しています。建具の細工もよく見ると補修してあります。地元の職人さんにお願いしたのですが、とても丁寧な仕事で、建物に対する愛を感じました。

床の間の壁に和紙を貼った2階の部屋

村上:2階は、床柱などの造形の個性が強かったので、京都の和紙職人ハタノワタルさんにお願いして、手漉き和紙を施工してもらいました。

ユニークな意匠の垂れ壁

田中さんがユニークな意匠の垂れ壁を発見したのは、階段の上り口。玄関の垂れ壁と同様に、遊び心とゆとりが感じられます。

「規模も大きい家ですし、当時としてはかなりこだわってつくられたものだったと思います」と村上さん。

廊下から庭を見下ろすアンガールズ田中さん

2階の廊下から庭を見下ろす田中さん。廊下の天井や右手の聚楽壁(じゅらくかべ)、独特のゆらぎがあるガラス戸も昔のまま。床板もそのまま使う予定でしたが、現場調査中に抜けてしまったので、張り替えたそう。