日々のなかにある何気ない“フシギ”を、ピースの又吉直樹さんが専門家に教わる『又吉直樹のヘウレーカ!』(NHK Eテレ 毎週水曜22時~)。この人気テレビ番組が、
『又吉直樹のヘウレーカ!』(扶桑社刊)として書籍化されました。
そこで又吉さんにインタビューを敢行。書籍化への思いと、今、ご自身の生活の回りで気になっていることを教えてもらいました。
すべての画像を見る(全4枚)インドカレーづくりにハマっている又吉さん。「失敗しても発見があります」
――2018年から放送が始まり、現在も放送中のこの番組。タイトルにもなっている「ヘウレーカ!」は「わかった!」という意味。古代ギリシャの科学者、アルキメデスが「アルキメデスの定理」を発見した際、嬉しさのあまりにこの言葉を連発し、街中を裸で走り回った故事にちなんでいます。番組初期の約半年分の回を収録した本著は、又吉さんにとっても嬉しい一冊となりました。「テーマは生き物、天体、人体など、身近なものばかりですが、普段の会話のなかではつきつめないレベルまで話が及んでいるのが、この番組の魅力。テレビ放送を追えない環境の方にも、活字で改めて触れていただける機会ができてありがたいです」
――収録に際しては、あえてリサーチや勉強をしていかないのがキモと考えているそう。「だから先生のお話を伺って、ホンマにわけわからなくなるとき多いんですよ(笑)。『ヘウレーカ(わかった)!』にならない。でもそこが、いいなあって。子どもの頃って、知らないことがあったら、がむしゃらに辞書引いたじゃないですか。でも大人になると『俺の前で、俺のわからん言葉使うな』みたいになっていく。そういう大人ならではの傲慢さを捨て去れたらと思って現場に臨んでいます。アルキメデスだって何度もわからなさ、難しさに突進し続けた結果、裸で街を走り回るほどのヘウレーカ!にたどり着けたわけですから」
●絶対こうと、こだわる必要はないと、植物から学んだ
――書籍に収録された回でとくに印象に残っているのは、都会のスキマに生える植物やアリの生態など、“生き物系”の話題。「これ僕の悪いクセで。文学とか芸術、経済なんかも、すぐに自分本位で捉えるんですよ。でも生き物は、そういう『俺やったら』という思考が一切通用しない世界でした。アリの生き方と自分との共感ポイントを探ろうと思うほど、心が迷子になってしまうというか(笑)。だから気持ちをまっさらにして彼らの世界をのぞき見させてもらい、常識を覆された気がします。そして日常生活に戻ったら、僕の中での可能性もまた広がったような気がしましたね。『この方法、人間でも使えるんじゃないかな? いや無理かな?』なんて」
――たとえば植物の生態から、暮らしへの応用方法を学べる、と言います。「植物って、“スキマ”を探して適応するのがすごく上手なんです。人間も植物の生存方法を見習えば、いろんなライフデザインが可能になるかもしれません。たとえば日当たりのいい部屋って、みんな好きじゃないですか。そのうえで、キッチン広めで、マンションだったら2階以上で…と、周りと同じ好みを追求すると、どんどん競争が激しくなりますよね。でもじつは、本当に日当たりが必要か見直してみると、家にかけるお金もおトクになるかもしれませんし。絶対こう、絶対こうと、こだわる必要はないんやって、僕も植物から学びました」
●テーブルの輪ジミの消し方が気になります
――ちなみに今、プライベートの又吉さんは、料理を探っているそう。「そこまでマメにしないものの、大好物のカレーだけは特別で、夜中にコツコツと煮込んだりしていて。ベースはインドカレーで、レシピ本も読みますよ。でもどうしても、レシピ以外のいらんもの入れてしまうんですよね(笑)。それで失敗して『ああ、やっぱりあのいらんことが原因やったな』とか。それもまたひとつの発見ですよね。そんなひとつひとつが悔しかったり、不思議だったり、おもしろかったりします」
――さらに、インテリアに関して「どうにか解決したい」ことも。「木のインテリアが好きで、自宅のテーブルも木製なんです。でも木のテーブルってコップを置くと、跡がつくじゃないですか。ふいても跡が消えなくて困っています。お寿司屋さんのカウンターみたいなシミのない状態を保つのってどうしたらいいのかなと、一度お寿司屋さんで聞いてみたんですよ。なんか表面を削るらしいんですね。大工やってる友だちにその話をしたら『俺、削れるで』『テーブル、削ったろか?』って言ってくれたんですけど。僕の場合は、その解決方法でホンマにええのかな?って。削ってると、いつかなくなっちゃうじゃないですか(笑)。どうしようかと考え中です」
『又吉直樹のヘウレーカ!』(扶桑社刊)は、おもに自然科学系の疑問を中心に、又吉さんが各専門家と共に疑問を解いていく一冊。親子で読んでも楽しめる内容です。ぜひチェックしてみてください。
【又吉直樹さん】
1980年大阪府生まれ。お笑い芸人・作家。「ピース」のボケ担当。2015年に小説『火花』で第153回芥川龍之介賞を受賞。著書に『劇場』『夜を乗り越える』など。