首都圏では小学生の5人に1人が中学受験をする時代。子どもが小学校へ入ると中学受験について意識する家庭も多いでしょう。子どもが前向きに勉強できるのかははっきりしないが、もし受験するなら早めに動いておきたい…。元中学受験塾講師の天海ハルカさんは、ご夫婦と小学校6年生の娘との3人暮らし。中学受験を決めたから塾に入るという家庭が多いなか、天海さんのご家庭は「先に塾へ通い始めてから子ども本人のやる気に任せた」と言います。一風変わった天海さん一家の中学受験の始め方について、お話を伺いました。
すべての画像を見る(全3枚)低学年は習い事と変わらない
元々水泳を習っていた娘は、小学校入学と同時に別の習い事をしてみたいと言い始めました。文字や数字の勉強を始めると勉強系の習い事に興味を持ち、「ママの塾行きたい!」と言い出したのは小学2年生のこと。習い事の延長として中学受験塾に入った結果、そのまま中学受験を目指すことになりました。
2年生の間に入塾テストを受け、塾へ通い始めたのは3年生からです。大手塾ですが3年生の授業は国語と算数のみで、授業の様子や宿題の量はとても受験を意識したものではありませんでした。というのも多くの中学受験塾が受験対策の授業を始めるのは4年生から。3年生までは勉強スタイルを確立し、基礎力を身につける期間とされ、受験という雰囲気は薄いのです。
授業の流れも教材も学校と違うため、塾が楽しいと言いつつも中学受験に対しては消極的でした。親としても中学受験への強い望みはなかったため、5年生になったら塾を辞めようという話もしていたんですよね。しかし、塾で勉強を続け受験の話を聞くうちに本人が受験へ興味を示し、5年生の終わりには「絶対に中学受験する!」と言い出しました。
「自分で決めた」は子どもの大きな原動力に
一般に中学受験は、「中学受験をさせたいという親の思いから始まり塾を決めて入塾へ」という流れが多いと思います。子どもが自ら中学受験という未知の世界を知る機会は少ないため、親の働きかけがない場合は存在自体を知らないまま公立中学校へ進学することもあるでしょう。
中学受験塾は授業料も安くはなく、送迎やスケジュール管理など親のサポートも必要です。まずは家庭内で話し合い、なにがなんでもというほどではなくとも、受験を前提に入塾を決めるのがよくあるルートだと思います。
しかしわが家はそうではなく、塾へ入ってから中学受験を決めました。親子ともに受験に対しては消極的だったのですが、あれよあれよと本人がやる気になり、中学受験を目標に勉強するようになったのです。受験しなくてもよいこと、塾を途中でやめてもよいことは何度も話したのですが、それでも意志が変わることはありませんでした。
ここまで聞くと塾からの圧力で受験ルートに押し込まれたようにも見えるのですが、元塾講師の視点から考えてもそうではないと思っています。娘が中学受験をすると決めたのは5年生の半ばで、本人曰く「せっかくたくさん勉強したのだから受験をしてみたい」とのこと。勉強という手段で友達と競ったり盛り上がったりするのが楽しかったようです。また、自分の進学先を自分で決めていくというのも魅力的に見えたと言っていました。難関校を目指せるレベルではありませんが、志望校選びも入試対策も熱心に取り組んでいます。
もちろん勉強に対するモチベーションが低い時期もあります。「やめたい」と思うことも多いでしょうが、自分で決めたことだからこそ、「大変。でも絶対受験する」と自分を奮い立たせられるようです。「選べる環境の中で自分で決めた道である」というのは大きな原動力になるものだと日々感じています。