シニアの住まい問題はさまざま。神奈川県と長野県で2拠点暮らしをする、画家、庭の料理家・藤田みどりさん(70歳)は夫婦ふたり暮らし。ブログ「北 鎌倉のお庭の台所·藤田みどりさんの暮らし2」では、四季折々の庭の様子や、収穫した野菜を使った料理などを紹介しています。ここでは、藤田さんの古民家暮らしを紹介します。
すべての画像を見る(全4枚)祖母の暮らしをお手本に、昔ながらの古民家に住まう
藤田さんが2拠点暮らしを始めたきっかけは「高齢の母に今の日本の夏は厳しすぎる」という夫のひと言でした。
「夏の家をつくろうと涼しい土地を探したのですが、私はしゃれた別荘地に興味ナシ。古民家や農家がいいと言い始めたあたりから迷走し始めて(笑)。見つけたここは夏は暑く、冬は寒い土地。人間には相変わらず厳しいです」(藤田さん、以下同)
その夏の家は「信州の鎌倉」とも呼ばれる、長野県上田盆地の塩田平にあります。総敷地面積は、なんと1300坪! かつて養蚕農家だった古民家で、庭にはたくさんの果樹やハーブ、野菜が植えられています。
「昼夜の寒暖差が大きいところは、フランスやイタリアの片田舎に似ています。花の色は鮮やかになるし、野菜や果物もよく育つ。『おいしい庭』をつくりたいというのもありましたが、東日本大震災を経験したことも大きい。いざというときのシェルターも兼ねて、安全な食をはぐくむ土地を確保したかったんです」
古民家の基本的な改築はプロの大工さんにお願いしましたが、梁(はり)に柿渋を塗るなど、自分でできることはなんでもやりました。
「おばあちゃん子で、祖母の暮らしを見て育ちました。あるものを生かすこと、食べ物を保存して味わう知恵はそこから学びました。先人の知恵や技を暮らしに取り入れて、できることは自分でやる。それが本当の人間らしい暮らし方だ、と思って実践しています」
手前右に写っているのはダイニングテーブル。キッチンカウンター代わりにも使えて、台所仕事がはかどります。今では面影はありませんが、改築前は台所や水場が土間でつながっていたそう。
「ダイニングテーブルは一段高くなっていて、リビングから続いてます。もちろん、そちら側は土足じゃないですよ!」